眼球の夢の映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
佐藤寿保は、ジョルジュ・バタイユの正嫡なのか! なにしろ眼球に取り憑くのだから。ただ、眼球を狙うカメラというのは、どうなのか? それだけなら、両者は互いに互いの鏡として向き合うしかないのではないか。そこには絶対的というべき距離がある。距離を介さなければ見ることが不可能な眼球と、同じく、そうでなければ写せないカメラだから。その距離を超えるには、カメラを捨てて眼球を刳りぬくしかなく、事実、物語はそこに進むのだが、その先には、見られる映画という背理がある。
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映画評論家
上島春彦
この監督は会社の私の机で撮影したことがあるが、フィルモグラフィーを見てもどれだか分からない、残念。でもその机で佐川君の緊縛写真をチェックしたのを思い出した瞬間、富士の樹海に佇む妖鬼の如き彼の姿が画面に現れ、驚愕。さて「真昼の切り裂き魔」のラストは、ポラロイドカメラが映し出す都市風景の虚空だったが、これは三十数年後のその続篇という路線。あちらには鎖陰という物語が底流としてあったが、こちらは裂かれる眼球が主題。インスタレーション美術も秀逸で超推薦作。
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映画評論家
モルモット吉田
ピンク映画時代に比べれば近年の一般作は本領発揮とは思えなかった佐藤寿保だが、久々に濃密な世界を自由に回遊しているようで、この居心地が悪そうな世界を堪能する。眼球をめぐる抽象シーンの連続だが、眼球舐めをここまで官能的に撮れるのは今では寿保監督だけだろう。凡庸な監督ならイメージが持続せず直ぐに息切れしたと思えるようなステレオタイプな設定を前にしても、30年にわたって追求してきたレンズ・接写を通した世界を更に熟成させ、闇と光の中へと観る者を誘う。
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