ソニータの映画専門家レビュー一覧
-
映像演出、映画評論
荻野洋一
アフガニスタン出身の主人公ソニータはラッパーである。彼女は科せられた属性を全否定し、自分は「ラッパーだ」と宣言する。でもそれは不可能な宣言だ。彼女には花嫁としての隷属的な生涯が待っている。この宿命から勇ましく離反する少女の行動をドキュメントする本作は、清々しいまでに反イスラム的で、彼女の夢を叶えるのはアメリカだ。彼女はうれしそうだ。他のどの国が彼女を救えたのか。しかしなおも眉に唾をつけて考えたい。これは巧みなプロパガンダではないのかとも。
-
脚本家
北里宇一郎
ドキュメンタリーの制作現場でいちばん悩ましいのは、撮影対象者とどう関わるかということで。例えば金銭的に困っている者に援助すべきかどうか。作り手の行動ひとつで、作品そのものの意義が違ってくる場合がある。映画と現実の垣根が消える怖れもある。この映画の監督もそれを突きつけられる。逡巡する。そしてある決断をする。そう、ドキュメンタリーって、写された人物だけを記録するものではない。作る側の心の軌跡もまた反映するものなのだ。そのことを改めて認識させられて。
-
映画ライター
中西愛子
アフガニスタンのタリバンからイランに逃れてきた難民のソニータ。ラッパーになりたい彼女は、娘を見ず知らずの男に嫁がせる祖国の古い慣習を訴える歌詞を乗せて歌う。2年半を費やしたドキュメンタリー。彼女の置かれた不安定な状況を、監督はカメラの向こうで見守るだけでなく、その才能を未来へと導く親身な手にもなって、撮影が敢行されていく。ソニータという少女がとにかく魅力溢れている。最後に渡米のチャンスを得るのだが、いまどうしているだろう。幸せであってほしい。
1 -
3件表示/全3件