時代劇は死なず ちゃんばら美学考の映画専門家レビュー一覧

時代劇は死なず ちゃんばら美学考

半世紀を越えるキャリアを持つ映画監督の中島貞夫が、様々な角度から時代劇を考察したドキュメンタリー。中島と女優・山本千尋の対談、東映剣会による殺陣の実演、俳優や映画監督へのインタビューに加え、新たに製作した映像を通して、作り手の想いを伝える。証言者として、「真田幸村の謀略」など多数の作品で活躍した松方弘樹も出演。
  • 評論家

    上野昻志

    途中から、旧知の友人たちが出てくるので、思わず半畳のひとつも入れたくなったが……その、まさに彼らが登場して、ちゃんばらの魅力はどこにあるかという点に話が絞られてくると、俄然、面白くなる。近衛十四郎の剣技が怖いということから、斬る者と斬られる者との間合いが大事という話になり、リメイク版「十三人の刺客」のように、やたらめまぐるしく動いても迫力がない、と言われる一々に肯く。と同時に、最後に一部が写された中島貞夫監督の新作時代劇を早く見たいと思う。

  • 映画評論家

    上島春彦

    最初にわざわざ、これは京都から見た「美学」だと説明が入る。見終わるとなるほど、と感心する作りになっている。黒澤明が何ぼのもんじゃい、とは誰も言っていないがそういう映画であり、その通りだと思う。私、実は見逃しているのだが、ここに出てくる伊藤大輔「長恨」が凄い。「移動大好き」監督、手持ちのクローズアップによる殺陣の移動ショットである。大映、東映の名作のフィルム引用も楽しいが、何と言っても中島貞夫監督によるラスト、短篇時代劇の殺陣が本格派で必見ものだ。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    淀川長治と宮川一夫の対談を記録した「映画の天使」以来と思わせる、映画が衣をまとって歩いているような好々爺な中島貞夫に瞠目させられる。その全身映画屋ぶりが、待望の新作映画と称するにはいささか寂しい作りの本作に映画の匂いを漂わせる。それが画面に満ちたあたりで登場するのが断片という形ながら映画らしさにあふれたチャンバラである。こんな予告篇を観せられたら、チンピラみたいな浪人が動乱の時代をネチョネチョ生きる中島時代劇の新作を何としても観たくなる。

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