はるねこの映画専門家レビュー一覧

はるねこ

多摩美術大学卒業制作作品「終わりのない歌」が第26回東京学生映画祭準グランプリを受賞した甫木元空が、脚本・編集・音楽・監督を務めた長編第1作。黄泉との境である森で店長は、母であるばーは自分と一緒に死ぬためにここに来たのではないかと想像する。「共喰い」の青山真治による劇映画初プロデュース作品。出演は、「FUGAKU1/犬小屋のゾンビ」の山本圭祐、「陽だまりの彼女」の岩田龍門。
  • 評論家

    上野昻志

    森を撮ったショットに惹かれる。その森の奥へ延びた道の途中にある太い木を越えると、人が朧に消えていく、というのは悪くない。もっとも、最後になると、その細い道筋に死体が累々と横たわることになるのだが。そこに到るまで、禍々しい情景と懐かしさをそそるような情景が交差するが、それを一連のこととして持続させるのは、歌と物音だ。歌は懐かしく流れ、音は不穏に響く。それらは確かに、ある種の統一を形作ってはいるのだが、そこに没入させるほどの磁力は感じられなかった。

  • 映画評論家

    上島春彦

    森のスモークの流れ方、人間の消え方、揺り椅子の動き方、それにトンネルの「結界」的な感覚など画面の面白さは一見の価値あり。わけありの人々を乗せ移動する車のセンスも良く、というか画角の切り取り方が上手いのか、これも見どころと言える。劇的葛藤を期待させるゆるゆるした運動感覚もいい。音楽のことは私じゃ判断のしようがない。アコギ感めちゃ高でニューフォークみたいだが最近はこういうのが流行りなのか。日本風ソニマージュという線で悪くないが物語は弱いでしょ。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    「マジカル・ミステリー・ツアー」を大和屋竺が劇団天象儀館で撮ったらこんな映画になったかも、などとあらぬ妄想に駆られるほどマジックリアリズム的世界がいとも簡単に出現し、監督が自ら作曲し唄ったという楽曲と共に引き込まれてしまう。木漏れ日、流れゆくスモーク、チェアに横たわるりりィの美しさ。音響を軸に映画が組み立てられているだけに爆音で観れば全く別の貌が耳を奪ってくれそうな予感。繰り返される〈がっしゃんどん〉の語感の心地よさは〈どですかでん〉を超える。

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