標的の島 風(かじ)かたかの映画専門家レビュー一覧
標的の島 風(かじ)かたか
「標的の村」の三上智恵監督によるドキュメンタリー。辺野古の新基地建設、高江のオスプレイヘリパッド建設、宮古島・石垣島のミサイル基地建設や自衛隊配備など沖縄の様々な現実と反対派住民たちの抵抗を、島々の自然と歴史が育んだ豊かな文化を交え映し出す。ナレーションを三上監督自身が担当。撮影監督は「戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)」「変魚路」の平田守。2017年3月11日より沖縄先行公開。
-
映画評論家
北川れい子
今夏公開「ハクソー・リッジ」は、熾烈を極めた沖縄戦で、絶対に武器を手にしなかった兵士の話。イーストウッドの「硫黄島」2部作同様、日本兵にも配慮した作品になっている。そして現実の沖縄――。ここでは多くの人々が、さまざまな場所、さまざまな立場、さまざまな思いで武器を持たずに戦っている。平和を、沖縄を、人々を守るために。ロボットのように無表情な警官たちが立ち並ぶ辺野古ゲート前などの抗議行動を含め、沖縄の人たちの、地に足の着いた戦いに心が震えてくる。
-
映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
あの圧制に対する抗いに参加したい。00年の「人間の鎖」(嘉手納基地包囲行動)以来沖縄に行ってない。最近は随分と行動不足。ごめん沖縄。当たり前の思いだ。これさえ保守的感性の輩には県外活動家予備軍と分類されるか。沖縄はじめ南西諸島への差別、彼の地と住民が軍の基地自体とそれらが引き寄せるリスクを集中して負わされていることへの気持ち悪さはそこに住まないゆえに強く感じる。それに気づかせてくれる価値ある記録・主張である本作が多くの人の蒙を啓くことを願う。
-
映画評論家
松崎健夫
本作で描かれる問題について個人的には同じ意見・立場であることを大前提に書く。一事が万事、酷い、酷い、と一方的な視点で事例を並べ、あざとい音楽で煽動。自衛隊の言い分や隊員個々の心情が完全に抜け落ち、彼らを単なる悪と断罪してしまっている。もし国や行政が取材に応じなかったのだとしても、それは理由にならない。宗教啓蒙映画のような不気味さを纏うこの映画は、本来は“正しい”ことを歪曲させている。三上さん、残念ながらこの手法ではお互いの憎しみしか生まないよ。
1 -
3件表示/全3件