怪物はささやくの映画専門家レビュー一覧

怪物はささやく

世界的ベストセラーとなった児童小説を「インポッシブル」のJ.A.バヨナ監督と「パンズ・ラビリンス」の製作スタッフにより映画化。難病の母を持つ少年コナーのもとに怪物が現れ、怪物が3つの話をしたら4つめの物語として彼が隠す真実を語るよう告げる。原作は作家シヴォーン・ダウドが遺したアイディアをパトリック・ネスが引き継ぎ完成させ、2012年カーネギー賞とケイト・グリーナウェイ賞をW受賞。パトリック・ネスは本作の脚本にも参加している。出演は「博士と彼女のセオリー」のフェリシティ・ジョーンズ、「エイリアン」シリーズのシガニー・ウィーバーほか。また、「沈黙 -サイレンス-」のリーアム・ニーソンが怪物のモーションキャプチャーを務めている。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    原作は日本でもかなり話題になった痛々しくも瑞々しいヤングアダルト小説だが、秀作「永遠のこどもたち」のJ・A・バヨナ監督は、ともすれば鬱々とだけしてしまいかねない作品世界を見事にゴージャスに映像化している。言葉の力のみによって読者のイメージを盛んに掻き立てるのも原作の魅力だが、すべてを見せざるを得ない映画には別のやり方がある。主人公コナー少年を演じるルイス・マクドゥーガルが素晴らしい。可憐な母親フェリシティ・ジョーンズも好演。実は演技を見る映画だ。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    幼くして厳しい試練にさらされた少年コナーの前に現れる怪物はその圧倒的な巨体とパワーで現実を凌駕する。過酷な現実に対抗するためにはそれをぶち壊すほどの荒々しい力を持った個体が必要だったとも言える。樹木をモチーフにした怪物のビジュアルと描写はダイナミズムにあふれているが、コナーの内的問題に収束されてせっかくの魅力が相殺されているようにも見える。コナーを演じたルイス・マクドゥーガルがEXOのジョンデにそっくりすぎて目が釘付けだった。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    ファンタジーとはいえ余りのダークさに驚いた。不治の病の母親と二人暮らしの少年のもとに夜毎訪れる異形の怪物。怪物は少年の敵ではなく、彼の人生の師、彼の分身とも思える。面白く作られているが、作品のテーマは「死」をいかに受け入れるかという観念的、哲学的なもので、主人公の成長を描いた教養小説的側面もある。子供たちに思考停止を強いるようなエンタメが世に溢れている昨今、このような映画は貴重といえる。怪物の語る三つの物語がもう少し面白いといいんだが……。

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