ダブルミンツの映画専門家レビュー一覧

ダブルミンツ

中村明日美子の同名漫画を「下衆の愛」の内田英治監督が映画化。高校時代、強者と弱者の主従関係となっていた市川光央と壱河光夫。時を経て衝撃的な再会を果たした二人の関係は次第に新しい形へと姿を変え、やがて取り返しのつかない犯罪の世界へと墜ちていく。出演は「にがくてあまい」の淵上泰史、「復讐したい」の田中俊介、「バースデーカード」の須賀健太、「スキマスキ」の川籠石駿平、「ANTIPORNO(アンチポルノ)」の冨手麻妙、「きみはいい子」の高橋和也、「無花果の森」の小木茂光。音楽は「淵に立つ」の小野川浩幸。
  • 映画評論家

    北川れい子

    映画のジャンル分けなど、さして意味はないが、原作がボーイズラブものとは全く気がつかなかった。自分の“犬”を見つけた男と、無抵抗で“犬”になった男との暴力経由の愛。設定や力関係は異なるが、例えば戦友同士の関係やヤクザ映画等でも男同士の友情を超えた愛は存在するし、献身的行為の中にあるエゴや自虐性も否定できない。そういう意味では面白く観たが、どうも内田監督、2人のイタイ関係を掴みきれていないような。特に“犬”側の心理。映像はこれまでになく凝っているが。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    私がかつて悪所場で遭遇した男色者らは罪と暴力の気配を滲ませていた。サブカルチャーの装いやジュネの修辞もなく呼び合う摩羅とは、辟易させる男のあくどさの二乗。そこに目を背けたチャラいBLやそうした素振りが女子ウケすることを知ってポーズする男性アイドルの如きはファンタジックなチンカスに過ぎぬ。だが本作にはちゃんとヘヴィさと汚辱があった。原作に淵上、毎熊克哉、カトウシンスケらの顔が乗って、ヤクザVシネのプラトニックさを犯す禁断の新味を為したと言える。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    例えば、誕生日が同じ人に出会うと何故かシンパシーを覚えるように、同じ名前の人に出会った場合を本作は考察してみせている。内田英治監督作品には“どうしようもない人間”ばかり登場するが、彼らは時に反社会的とも思える独自の価値観を好しとしつつ、現実と対峙しながら力強く生き抜いてゆくという特徴がある。いっけんすると特異な原作だが、そういう意味で内田監督作品らしい題材なのだとも解せる。小路紘史監督作「ケンとカズ」(15)のその後を想起させる脇役の姿も一興。

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