いぬむこいりの映画専門家レビュー一覧
いぬむこいり
鈴木清順監督の「オペレッタ狸御殿」などのプロデューサー片嶋一貴監督作品。小学校教師・梓の家には、軍功を上げた家来の犬がお姫様と結婚するという犬婿伝説が伝わっている。ある日、仕事で問題を起こし、婚約者と大喧嘩した梓は、空からお告げの声を聞く。出演は、「五つ星ツーリスト THE MOVIE 究極の京都旅、ご案内します!!」の有森也実、ジャズパンクバンド・勝手にしやがれの武藤昭平、「戦争と一人の女」の江口のりこ、「The Room」の尚玄、「アジアの純真」の笠井薫明、「半グレvsやくざ」シリーズの山根和馬、「知らない、ふたり」の韓英恵、「さらば あぶない刑事」のベンガル。
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評論家
上野昻志
有森也実演じる、四十路とはいえ世間知らずの女教師が、そのナイーブさゆえに、神のお告げに誘われて、お宝探しの旅に出る。が、それは、煉獄巡りとでもいうべき苦と快があざなう縄のごとく絡まる旅であった。と、こちらも監督の力技に惹かれて、香具師めいた口上になるが、これが面白い。リアル政治のパワーゲームもあれば、犬に変身する王子との官能的な交合もあり、戦争もありと盛り沢山なのだが、わたしは、柄本明の最期に、由比忠之進さんのことを思い出し、しばし瞑目した。
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映画評論家
上島春彦
人獣婚姻譚という意味、要するに「八犬伝」だね。全四部作、実質前後篇。長いが、前篇は壮大なる序章という感じで後篇ようやく面白くなる。齢とって良かった、と思うのは貧乳と熟女AVを許せるようになったこと。許せるというか好み。だから有森さんが出し惜しみなく脱いでくれて万々歳である。犬にはあれが正常位。神話的古層と虚構的現在、二つが戦争を軸に結合する構成なのは悪くないが、表現は舌たらず。ロケーションも凄いし、そうなると前篇田舎風景の弱さが露呈する感じか。
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映画評論家
モルモット吉田
長尺映画とはいえ四章からなる本作は演出力で突っ走るタイプの作品ではない。第一章のハイテンションな有森也実が日常を投げ打って猪突猛進してゆく姿は園子温的な力技が無い分、空回り。二章の島の選挙戦も同様だが、これが無人島に向かう三章から俄然、映画が熱を帯び始める。現実社会の中で虚構を描こうとすると引っかかっていたものが、自然の中では小手先の誤魔化しも効かず、俳優たちの力が存分に発揮され、獣姦も、PANTAと緑魔子のアングラ芝居も全てが成立してしまう。
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