最低。(2017)の映画専門家レビュー一覧

最低。(2017)

AV女優・紗倉まなによる同名小説を「64 ロクヨン」の瀬々敬久監督が映画化。日常に耐えきれず新しい世界の扉を開く主婦・美穂、誇りを持ちながら仕事を淡々とこなす人気AV女優の彩乃、奔放な母親に振り回される女子高生・あやこという3人の女たちの運命を綴る。出演は「今日という日が最後なら、」の森口彩乃、「フィギュアなあなた」の佐々木心音、TV『霊魔の街』の山田愛奈、「下衆の愛」の忍成修吾、「ろんぐ・ぐっどばい 探偵 古井栗之助」の森岡龍、「ハローグッバイ」の渡辺真起子、「まなざし」の根岸季衣、「映画 深夜食堂」の高岡早紀。撮影を「ディストラクション・ベイビーズ」の佐々木靖之、音楽を「マリアの乳房」の入江陽が手がける。
  • 評論家

    上野昻志

    子どもが欲しいという以外、なんの不自由もなく暮らす30代の専業主婦、喫茶店を営む祖母と奔放な母と暮らしながら、家にも学校にも馴染めず絵を描くことだけが支えの女子高校生、家を捨てて専門学校に通ううちにAV女優となり、日々を撮影に追われる20代の女性、三人の日常を追った描写は、さすがに堂に入っているのだが、主婦が停滞した日常から踏み出すべくAVに出演したところから明らかになる、三者それぞれが抱える悩みが、なぜか、同じように見えてくるのが物足りない。

  • 映画評論家

    上島春彦

    久しぶり、瀬々の映画に心から感服した。最初は話が読めず結構とまどったが、それ自体脚本の意図とじわじわ分かってくる。AV嬢をめぐる複数の物語が同時進行する構成でネタバレ厳禁ぽい部分も多い。怠惰な母を持った天才女子高生画家のいらついた日常と、仕事が家族にバレた人気AV嬢のルーティンワーク、初めてAVに出る主婦の本番デビュー、三つの挿話が脈絡なしに切り替わる編集センスが手練れの技。この程度は書ける。普通人に出来る冒険ってもうAVしかないんだろうな。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    キワモノかと思いきや、AVを尊ぶわけでも下に見るわけでもなく、彼女たちが選択した一職業として描いている。元AV女優の母を持つ娘、AV女優の娘を持つ母など、親子・姉妹の血縁を軸にした骨太な女性映画になっており、「ヘヴンズ ストーリー」に匹敵する魅力を持つ。生と死、都会と地方の対比も鮮やかに、彼女たちの物語が週末の夜から朝にかけて結実する見事な構成は瀬々版「土曜の夜と日曜の朝」と言いたくなる。不安定な心情を上ずった声で繊細に演じた山田愛奈が出色。

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