Ryuichi Sakamoto:CODAの映画専門家レビュー一覧

Ryuichi Sakamoto:CODA

    2012年から5年に渡って坂本龍一に密着、過去の歩みを振り返りながら、新たな楽曲が誕生する過程を追ったドキュメンタリー。東日本大震災の被災地で、水に濡れた被災ピアノと出会った坂本は、ガンとの闘病などを経て、新たな楽曲を生み出してゆく。監督は、ニューヨーク大学で映画製作を学び、「ロスト・イン・トランスレーション」の共同プロデューサーを務めるなど、日本映画界との関わりも深いスティーブン・ノムラ・シブル。
    • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

      佐々木敦

      東日本大震災の翌年から五年間にわたって撮影された膨大な映像素材を基に作られたドキュメンタリー作品。教授とは一時期よく仕事でご一緒させていただいていたが、ちょうどこの映画の撮影の前くらいから長らくお目にかかっていないので、どうもお久しぶりです、という気分になった。それほど素顔の坂本龍一が、ここには映っている。病いを得てからの心境が率直に語られており、基本的には穏やかで落ち着いたトーンでありながら、音楽と人生への静かなる情熱が画面から伝わってくる。

    • 映画系文筆業

      奈々村久生

      ベルトルッチとプロデューサーのジェレミー・トーマスの無茶ぶりに振り回されるエピソードが印象的。当初出演のみのはずだった「ラストエンペラー」の劇中音楽を現場で急遽書かされたり、劇伴を一週間で作らされたり、「シェルタリング・スカイ」ではテーマソングのレコーディング直前でダメ出しが入り、「モリコーネならやる」とたきつけられる。それを楽しそうに語る姿に人柄が滲み出る。アーティストでありながら職人にもなれる。作品を追っていけば人は自ずと見えてくる。

    • TVプロデューサー

      山口剛

      監督のノムラ・シブルはドキュメンタリーでポートレイトを描くという意図を述べているが、9・11から3・11そして大きな病を経験して晩年を迎えようとしている作曲家の肖像には、彼の人生、音楽、思想が見事に刻み込まれている。芸術家は炭坑のカナリアだと自ら言う如く、地球の危機への憂慮、平和に寄せる切実な思いに心が打たれる。敬愛するタルコフスキーをはじめ、作曲家、俳優として関わった、大島?、ベルトルッチ、イニャリトゥとのエピソードが映画ファンにはとても面白い。

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