STAR SAND 星砂物語の映画専門家レビュー一覧

STAR SAND 星砂物語

「戦場のメリークリスマス」の助監督を務め、「明日への遺言」の脚本を担当したロジャー・パルバースが、自作の小説『星砂物語』を自らの監督で映画化。1945年の沖縄。小島で暮らし始めた少女・洋海は、脱走兵の岩淵、アメリカ人のボブと出会うが……。出演は「秘密 THE TOP SECRET」の織田梨沙、「無限の住人」の満島真之介、「追憶」の三浦貴大。主題曲を坂本龍一が担当。2017年6月21日より沖縄・桜坂劇場にて先行公開。
  • 映画評論家

    北川れい子

    “誰も殺さない米兵”といえば、同じ沖縄が舞台の「ハクソー・リッジ」が記憶に新しいが、こちらは小島の洞窟に身を潜めた脱走兵、しかも洞窟では脱走した日本兵と一緒。この二人に少女が絡み、更に日本兵の兄も加わって、戦争、愛国心、命などが寓話的、演劇的に描かれるが、いまちい描写も印象も散漫なのが残念。現代のパートも取って付けたようで、監督の狙いである“生きてこそ”というテーマを曖昧にする。いや、命は確かに繋ごうとしているが。“星砂”というタイトルも感傷的。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    ついつい島尾敏雄と「戦メリ」のことを連想しつつ観ていた。男性原理的な戦争の末端に属する男と土着の娘との南の島における出会いや、後の歴史を知る者にとっては局地的一時的なことでしかないと思える日本兵に捕らえられた白人捕虜などの要素ゆえに。しかしそれはどこかタカをくくって観ていたようなもので、中盤、吉岡里帆が気づくボールペンのネタ、あれはほんとうに面白いと思いました。一種のミステリー映画。緑魔子のマジカルな登場で、生きてこそ、という主題が出た。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    有孔虫の亡骸である星の砂は、美しく、そして希少である。それは本作における人間関係を例えているようにも見える。戦争において「戦わないことを選択する」という理想に伴った〈死〉は、決して美しくないからだ。並列する異なる世代の物語は、戦争体験を後世に伝えることの難しさを提示。そして「父は長崎に」なる台詞で観客が推し量ることを必要とするように、後世に伝えるあり方も本作は提示している。織田梨沙の話す英語は句切る位置が正確で、言葉の美しさが耳に残るのも一興。

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