ちはやふる 結びの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
かるたの札を取るスピードには毎回ワクワクする。全神経が指先に集中した一瞬のリアクション。このシリーズの華であり、見せ場である。けれどもそれ以外は、他の部活映画と大差なく、部員募集のエピソードや他校との因縁など、いまさらの話の蒸し返し。原作コミックの、そして広瀬すずのファンにしてみれば、これでOKなのだろうが、受験勉強のために一度はかるたを捨てる部長の話など、いかにも少女コミックらしいヤラセで、その先までミエミエ。クィーンの松岡茉優が楽しい。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
クライマックス的なものに溢れているがクライマックスがない。いや、あったが、映画自体が、もっとすごいことが控えてますよ、と主張していて、そのくせそれについてはイメージ映像的に見せてすっ飛ばしたというか。もともと前々作前作もずっと才能と情熱と若さのある登場人物たちの躍動と成長と運命を見せ、さあ次、また次、と引っ張るドライヴ感でやってきていた。でも悪いとも思わない。ぬるい恋愛より熱情のほうが大きいことや義務感の強い人間が天才を凌駕することも面白い。
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映画評論家
松崎健夫
百人一首の一節を引用し、それが物語と同期するのが本作の魅力。その中で、聞くべき〈音〉と、そうでない〈音〉との線引きを、余計な〈音〉を削ぎ落とす音響効果で演出している。そのことは、千早と太一、新との隔たりを表現しているだけでなく、畳スレスレの低いカメラ位置と共に、観客もまた競技かるたの世界へ没頭させる効果も生んでいる。出番の少ない松岡茉優は、前作に続いて瞬きひとつしない役作りで“現人神”の如きバケモノ感を醸し出し、メンターとなる賀来賢人も出色。
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