ボブという名の猫 幸せのハイタッチの映画専門家レビュー一覧
ボブという名の猫 幸せのハイタッチ
実話に基づくベストセラー小説『ボブという名のストリート・キャット』を映画化。ロンドンでミュージシャンの夢破れ、家族にも見放されてホームレスとなった青年ジェームズ。薬物依存からも抜け出せずドン底の生活を送る彼の前に、一匹の野良猫ボブが現れる。監督は、「シックス・デイ」のロジャー・スポティスウッド。出演は、「アタック・ザ・ブロック」のルーク・トラッダウェイ、ドラマ『ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館』のジョアンヌ・フロガット。2017年ナショナル・フィルム・アワーズUK最優秀英国作品賞受賞。
-
映像演出、映画評論
荻野洋一
愛猫ボブの助けで薬物依存症を克服したイギリス駄目男の実話であり、ケン・ローチ流の苛酷なソシアルワークにカワイイ系のペット愛好映画を接ぎ木するという、じつに理に適ったジャンル横断で間口を広げた。薬物やアルコールの依存による生活崩壊、生命危機について、この映画はきわめて例外的に幸運なケースを提示する。まずはこの立ち直りを実話の映画化というエクスキューズのもとで差し出すことにポジティヴな意味を見出す、という製作サイドの企ては意義深く、温かい。
-
脚本家
北里宇一郎
これをK・ローチが描けば、もっと過酷で厳しいものになるだろう。元ジャンキーの路上ミュージシャン。そこに猫が加わるだけで、映画が柔らかくなり、温もりを感じさせ。大晦日で、家族団らんでというその時期の孤独。だけど猫がいることで寂しさが薄れる。この青年が遂にどん詰まりとなり、その最後の小銭で求めたものがキャットフード。猫好きとしては胸がキュンとなる。ボブが行方不明の大詰めに少し作意が見え、猫が見た眼のカットもやりすぎの感。が、嫌みのない素直な善さがあって。
-
映画ライター
中西愛子
猫ブームとは世界現象だったかと痛感させられる。ホームレス・ミーツ・猫・イン・ロンドン。ドラッグの更生プログラム中の青年が、ひょんなことから、のら猫と暮らし始め、街で音楽活動を共にしているうち巷で大反響を呼んでしまう。そんな実話をもとに、その本物の猫“ボブ”を出演させて映画化。運のいい成功物語というより、どん底にいた主人公が地に足ついた善意の人々に出会うことによって少しずつ更生していく社会派な側面がよく描けている。でもやはりボブの好演にホッコリ。
1 -
3件表示/全3件