ドリームの映画専門家レビュー一覧

ドリーム

第89回アカデミー賞作品賞を含む3部門ノミネートのヒューマンドラマ。1961年、米ソが宇宙開発競争を繰り広げるなか、キャサリンは黒人女性初のNASA宇宙特別研究本部に配属される。白人男性ばかりの職場環境は劣悪だったが、彼女は職務に奮闘する。出演は、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」のタラジ・P・ヘンソン、「ヘルプ 心がつなぐストーリー」のオクタヴィア・スペンサー、「ムーンライト」のジャネール・モネイ、「クリミナル 2人の記憶を持つ男」のケビン・コスナー、「ギリシャに消えた嘘」のキルステン・ダンスト、「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ。監督は、「ヴィンセントが教えてくれたこと」のセオドア・メルフィ。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    邦題でミソを付けてしまったが、これは愛すべき秀作。資料によると史実から幾つか変更点があるのだが、能力の高い黒人女性たちがNASAの宇宙計画に貢献していたということ自体知らなかったので、とても感銘を受けた。主演三名いずれも大変に好演している。クセ者上司のケヴィン・コスナーもすごく良い。東西に施設が離れて建っているラングレー研究所を「非白人用トイレ」に行くためにタラジ・P・ヘンソンが何度も行き来する様子が映画的。そしてファレルの音楽が最高。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    これがまったく過去の話とは思えないことが最大の問題である。昨今の女優たちが語る、ギャランティや待遇の男女差をめぐるハリウッドの実状を筆頭に、事態は随所で現在進行形だ。黒人であり、女性であるという二重のハンデを負ったキャサリンは、計算書に自分の名前をタイプすることすら許されない。それが当然だとまかり通っている理不尽さ。私も最近、精魂注いだ自分の原稿が別人の名前で掲載される事件があり、死ぬほど悲しい思いをした。彼女の悔しさが骨身にしみる。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    最高の知性を持った3人の黒人女性が先端技術の牙城NASAで黒人に課せられた劣悪な労働条件に敢然と挑み見事な成果をあげていく。そのパワフルで前向きな生き方に感動する。3人の女優がいい。黒人特有のグラマラスな肢体や美貌ではなく、演技力と存在感で勝負しているのは、キャスティングの勝利だ。半世紀以上経った今も、アメリカ政府の中枢部に残る白人至上主義――アメリカの栄光を描いた映画が期せずして今のアメリカの恥部に触れる結果となったのは皮肉なタイミングだ。

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