オリエント急行殺人事件(2017)の映画専門家レビュー一覧
オリエント急行殺人事件(2017)
アガサ・クリスティーの傑作ミステリーを、ケネス・ブラナーがメガホンを取り、豪華キャスト共演で再映画化。ヨーロッパ各地を結ぶ豪華列車オリエント急行の走行中に殺人事件が発生。犯人は誰なのか? 名探偵エルキュール・ポアロが、事件の真相に挑む。ポアロをケネス・ブラナー自身が演じるほか、「それでも恋するバルセロナ」のペネロペ・クルス、「007 スカイフォール」のジュディ・デンチ、「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」のジョニー・デップ、「スター・ウォーズ フォースの覚醒」のデイジー・リドリーらが共演。
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翻訳家
篠儀直子
せっかくキャメラが長い横移動をしても、特に驚きも興奮もない、単なる移動のための移動になっている。それに、優れた舞台人であるブラナーには、列車内の奥行きをもっと活用してほしかった。とはいえ、豊かな細部を持ちながらルメット版より上映時間が短いというスピーディな運びと、画面の風とおしをよくしてダイナミックにしようとするさまざまな工夫には好感が持てる。話の起伏を際立たせた脚色も悪くないが、ハバード夫人はもっと強烈に印象的な人物として描かれるべきなのでは。
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映画監督
内藤誠
列車内の物語という密室の芝居のやりとりが重要なので、シドニー・ルメット演出の前作と同じく、芝居好きの監督が求められて、ケネス・ブラナーはぴったり。出だしの数ショットを見ただけでオリエント急行に乗り込むのが期待できる流麗なカメラワークと演出だ。主役としても、これぞ探偵ポワロという立派な髭をたくわえて、ブラナーは堂々たる風格。脇役もミシェル・ファイファー、ジョニー・デップ、ウィレム・デフォーと揃い、贅沢な感じ。雪山を背景にした駅舎のセットもみごと。
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ライター
平田裕介
どうしてもS・ルメット版と比べてしまうわけだが、とりあえず同版以上に流麗かつ緻密な撮影には魅せられた。特に俯瞰で固定したままワンカットで捉えたポワロの現場検証シーンなどは、なかなかの新鮮さ。ただし、K・ブラナーが演じるポワロは、体型もスマートで結構なアクションまで繰り出してやたらと俊敏。今風のキャラ設定だが、これまでのポワロのイメージに囚われた者にはどうしても違和感が。乗客の顔触れもたしかに豪華だが、スターとしての輝度はやはり旧版のほうが高い。
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