かぞくへの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
親友に大きな借りができたと思い悩む主人公と、主人公を責める気などまったくないその親友。どちらもキレイごとではなく、しっかり足が地に着いていて、ちょっと大袈裟に言えば、主人公たちの友情と思い遣りに向田邦子的世界を連想したり。俳優陣の等身大の演技もリアル。市井のささやかな話で、説明台詞で片付けたりの描写不足は否めないが、作者たちの誠実さは伝わってきて、好感が持てる。主人公の恋人のリアクションも説得力がある。2年前の作品だが、公開おめでとう。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
面白い。家族がない人間も家族との確執に悩む人間も結婚などということをやろうとすれば、アメリカ映画で観たことあるようなロードをさすらう無法な男女の結婚ではないのだから、彼我の家族そのものと家族観の突き合わせと食い違いにギョッとさせられる。これはやってみればわかる。そこに主人公が友に負い目を感じる出来事を重ねてくる作劇と、ダルデンヌ兄弟ふうの手持ちで良いところに入っていく撮影が、あり得ると思える範囲では最大限の、生活派ハードボイルド世界をつくる。
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映画評論家
松崎健夫
己が媒介となって悪意無く他人を詐欺に巻き込んでしまった場合、その責任はどこまで我が身に及ぶのか?という疑問。本作では登場人物たちの苦悩を際立たせるため、詐欺に遭ったことを確認する行動が繰り返し描かれる。この反復を丁寧に描くことによって、人間関係がじっくりと炙り出され、人間ドラマを紡ぎ出してゆくことにも繋がっている。「百円の恋」に続いて「あゝ、荒野」でのボクシング指導においても才覚を見せた松浦慎一郎が、自らの体験を基に主演しているという点も一興。
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