ナチュラルウーマン(2017)の映画専門家レビュー一覧

ナチュラルウーマン(2017)

第67回ベルリン国際映画祭脚本賞受賞のヒューマンドラマ。トランスジェンダーでナイトクラブの歌手マリーナは、歳の離れたボーイフレンドのオルランドと暮らしている。ある夜、オルランドが突然亡くなり、マリーナは思いもかけないトラブルに巻き込まれる。監督・脚本は、「グロリアの青春」のセバスティアン・レリオ。出演は、トランスジェンダーの歌手ダニエラ・ヴェガ、「ネルーダ 大いなる愛の逃亡者」のフランシスコ・レジェス、ルイス・ニェッコ。第42回トロント国際映画祭SPECIAL PRESENTATIONS部門出品、第89回アカデミー賞外国語映画賞チリ代表作品。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    運命の転変に翻弄されるトランスジェンダーのヒロインを、トランスジェンダーのダニエラ・ヴェガが演じている。まさにスター誕生というべき素晴らしい熱演だと思う。冒頭をはじめ要所要所の絵作りはスタイリッシュだが、基本的にはじっくりと描かれた人間ドラマだ。音楽をマシュー(英国人なので「マチュー」ではない)・ハーバートが手掛けているのだが、プレス資料での扱いの薄さは残念。原題「ファンタスティック・ウーマン」より「ナチュラルウーマン」の方が政治的に正しい?

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    ダニエラ・ヴェガの剛柔入り混じる佇まいから目が離せない。恋人と死別した後の彼女の孤独な闘いがドラマのメインテーマとなっていくが、生前の恋人との愛情深い関係がしっかり描けているからこそ、彼女を支える不屈の勇気を共有できる。劇中で流れるアレサ・フランクリンやヴェガ自身の歌う「オンブラ・マイ・フ」にも怒りや憎しみに勝る思いが溢れていて、何よりもラブストーリーであることが強く実感される。南米チリの鮮やかで艶っぽい映像美とマジックリアリズムの気配が眼福。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    トランスジェンダー女優のダニエラ・ヴェガの不思議な魅力と存在感の映画だ。フェミニン的エロティシズムとは対極的な、ある種ハードボイルドで無骨な潔さが、偏見と差別と闘っている彼女の悲しみや怒りを的確に表現している。彼女と敵対する故人の家族の描き方などは画一的ではあるが、性的マイノリティへの無理解に対する怒りは社会派的とも言えそうなストレートな描写で共感を呼ぶ。男性目線と批判されそうだが、もう少しエロスの世界を垣間見たいような気もする。

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