さよなら、僕のマンハッタンの映画専門家レビュー一覧
さよなら、僕のマンハッタン
「gifted/ギフテッド」のマーク・ウェブ監督が、マンハッタンを舞台に綴る青春ドラマ。大学卒業後、親元を離れたトーマスは、ある日、父と愛人ジョハンナの密会を目撃してしまう。風変わりな隣人W.F.ジェラルドの助言で、トーマスはジョハンナを尾行するが……。出演は「グリーンルーム」のカラム・ターナー、「アンダーワールド」シリーズのケイト・ベッキンセール、「サバイバー」のピアース・ブロスナン、「静かなる情熱 エミリ・ディキンスン」のシンシア・ニクソン、「ギヴァー 記憶を注ぐ者」のジェフ・ブリッジス、「フラットライナーズ」のカーシー・クレモンズ。脚本を「素晴らしきかな、人生」のアラン・ローブ、撮影を「ピアノ・レッスン」のスチュアート・ドライバーグが務める。
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翻訳家
篠儀直子
あとあと効いてくるのだろうと思える意味深長な台詞が多数聞こえつつ、なかなか話の焦点は見えてこないが、あるシーンでJ・ブリッジスが突然映画を動かす。彼のこの演技にはどうしたって心を奪われないわけにはいかず、その後こちらはもはや作り手のなすがまま。そしてこの映画は、まさにわれわれが憧れていた(たぶん脳内にしか存在しない)NYの物語であり、美しい寓話を観ている思いがする。監督の前作で、撮影監督も同じである「ギフテッド」との画調の違いも興味深い。
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映画監督
内藤誠
映し出される場所や流れる名曲によってマーク・ウェブ監督のニューヨークへのあこがれが伝わってくる。主人公の青年トーマス(カラム・タナー)や、謎の隣人(ジェフ・ブリッジス)以下、配役も渋くてニューヨーカー風。だがトーマスが「今のニューヨークは商業主義に覆い尽くされ、新たなムーヴメントは起きなくなってしまった」と考えるように、かつてウディ・アレンが描いた街の肌触りは伝わってこない。出版編集にたずさわる人物が出てくるけれど、彼らの未熟な言動は時代のせいか。
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ライター
平田裕介
エンパイア・ステート・ビルをはじめとしたベタなランドマークを出さない。セントラル・パークは出るが、これ見よがしには映さず。これが上流階級やそうでない者もふくめ、マンハッタンで生きる人々の生活感をうまく醸す。「(500)日のサマー」以前からM・ウェブが映画化を熱望していた企画だが、妙に力を入れることなく若い層も中年や壮年と呼ばれる層も観ればなにかしら刺さるドラマに仕上げている。ひとまず“大作から離れた監督のやっと地に足がつけた”感は伝わる。
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