ジェイン・ジェイコブズ ニューヨーク都市計画革命の映画専門家レビュー一覧
ジェイン・ジェイコブズ ニューヨーク都市計画革命
1950年代のニューヨークにおいて、天才的な洞察力と行動力でそれまでの都市計画を根底から覆した都市活動家ジェイン・ジェイコブズに迫るドキュメンタリー。当時の記録映像や肉声を織り交ぜ、都市開発の帝王ロバート・モーゼスとの知られざる闘いを映し出す。監督は『帝王ヴァレンティノ 最後のランウェイ』のマット・ティルナー。声の出演で「スパイダーマン:ホームカミング」のマリサ・トメイ、「マグニフィセント・セブン」のヴィンセント・ドノフリオが参加。
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ライター
石村加奈
常識的なジャーナリスト・ジェイコブズが偉大なモダニズム建築家モーゼスに一発逆転を食らわせる50年代のドラマには、如才ない権力者との戦い方など、現代でも役立つアイデアがある。机上の空論で「秩序」を掲げるのではなく、多様な人々が集う都市の「混沌」に詰まっている知恵を見出す方法を提案した、ジェイコブズの斬新な観察眼や柔軟性が、記者、母として、長い時間をかけてニューヨークで育まれた胆力である点を丁寧に描けていたら「人生フルーツ」的味わいが出たのではないか。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
冒頭クレジットで本作がロックフェラー財団の助成を受けたことを知る。「そうなんだな」と思いながら作品を見ていくと最後の方で、強引な都市再開発のドンだったロバート・モーゼスに引導を渡すNY州知事としてネルソン・ロックフェラーの名が出るに及び、合点がいった。市民活動家へのアシストは一族の名誉欲を満足させるものだからだ。この事情はさておき、本作を見たら主人公の著書を読んでみたくならずにいられまい。後述の「私はあなたの~」同様、これは現在の問題である。
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脚本家
北里宇一郎
「人生フルーツ」の老建築家が発言していたように、効率優先の集合住宅は、人間にそぐわないのかも。この記録映画を観ていると、さすが米国だと思う。高層住宅や高速道路の建設に対して、住民は徹底的に抗議し、戦い、勝利を獲得している。都市論からはじまって、活動家ジェインの主張、彼女の周囲の人々のコメント、そして運動の経緯と、その構成は手際よく、分かりやすい。ただ少し立ち止まって、人の温もりのある街、その住民たちの生活ぶりを具体的に見たかったという欲も。
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