ウインド・リバーの映画専門家レビュー一覧

  • 批評家、映像作家

    金子遊

    ワシントン州のインディアン保留地にはさまれた町に住んだことがある。ダウンタウンで酒に溺れるネイティブの姿を見かけるたびに、彼らの失意を思って心が痛んだ。ひとりの少女の死から、ワイオミング州にある保留地における人種差別や女性への暴力、銃社会の矛盾がひも解かれる。ネイティブの女性と結婚し、混血の子をもうけた中年ハンターを主人公にすることで、この物語は西部開拓時代におけるインディアンの虐殺と同化という、負の歴史を寓意的に表現しているのではないか。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    脚本家として、政治や法律から置き去りにされた人びとを書き、高い評価を受けているT・シェリダン。監督としても今回、ネイティブ・アメリカンの問題を主題に、得意分野で勝負に出たとみる。舞台の保留地は画面に衝撃的な素顔を晒す。法よりも自然が支配する土地で、人間関係が強いる緊張は、主題の垣根を越えるまでに凄まじい。こんな場所に知識の乏しいFBIの新米女性捜査官を単身送り込むとはいかにもドラマチックとも感じるが、ともあれ強固な骨格のクライム&サスペンスだ。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    雪深い山をジェレミー・レナーが猛然とスノーモービルで駆け抜ける。頭よりも肉体でものを考えているような、ある種の野蛮さをまとっているレナーの佇まいや持ち味が、言葉や法的な術を持たず真実に迫る役にはまっている。その土地のタブーを一面の雪が白く覆い隠すロケーションも象徴的。現地の気候を知らずに軽装でやって来た女性捜査官が極寒の洗礼を受ける冒頭のエピソードが後半効いてくる。編集の妙も含め、随所にメタファーがちりばめられているが、故にいささか理屈っぽい。

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