バトル・オブ・ザ・セクシーズの映画専門家レビュー一覧
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批評家、映像作家
金子遊
三拍子そろった映画ではある。「リトル・ミス・サンシャイン」の監督たちの新作で、男性至上主義の元テニス選手と女子テニスのチャンピオンの男女対決という実話、70年代前半の魅力的なファッションに、エマ・ストーンら俳優陣の役づくり。もっとおもしろくなっても良い作品なのだが……。ビリー・ジーンが夫を持ちつつ、ツアーを重ねるなかで同性とのランデヴーを楽しむ恋愛模様は、女性解放運動とそのイデオロギーがスポーツ選手の私生活に与えた影響として新鮮に映った。
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映画評論家
きさらぎ尚
ビリー・ジーン・キングの功績を描いているが、伝記的アプローチは淡白。主題は彼女が言う「女が上だとは言ってない。ただ敬意を払って欲しい」にある。E・ストーンを中心に、主題を支えるS・カレル、A・カミングらの配役センスの良さ、彼らの持ち味と達者な演技で、そこそこ楽しい。特にお調子者キャラの男性優位主義者を演じるカレルは◎。さて性差の壁を破るために挑んだ’73年の一戦から今日までの変革は……。あぁ、映画業界は未だ圧倒的な男性社会。見て楽しんでから一考しよう。
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映画系文筆業
奈々村久生
今をときめくエマ・ストーンがイケてない。冴えない髪型にほぼすっぴんで洒落っ気のない眼鏡。テニスウェアを着ても若い女性プレイヤーらしい華やかさはなく性別も年齢も不詳な感じ。しかしこれは決して本人の劣化でも衣裳メイク部の不備でもない。むしろなぜイケてないように見えるのかが本作の最大のテーマである。そしてなぜ彼女をイケてないと思ったのか、己の価値観を見直すことになった。それをふまえて観ると、序盤の美容室のシーンはなんとロマンティックな瞬間だろうか。
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