九月の恋と出会うまでの映画専門家レビュー一覧
九月の恋と出会うまで
松尾由美の同名小説を「嘘を愛する女」の高橋一生、「一週間フレンズ。」の川口春奈のW主演で映画化。マンションに引っ越してきた志織は、部屋で自分を強盗殺人から助けようとする一年後の未来からの声を聞く。相談を受けた隣人・平野は、あることに気づく。監督は、「わたしに××しなさい!」の山本透。
-
映画評論家
北川れい子
何でこんなにヤヤコシいラブストーリーを作るんだか。壁の穴から聞こえてくる未来を知る男の声だと。その声に言われるまま、アパートの隣人・高橋一生を尾行して写真を撮るヒロイン。いくら“運命の人”絡みのタイムパラドックスものだといっても、アホらしくて付いていけない。その時間の逆行も何が何やら。家主が趣味で建てたようなアパートや住人たちも浮世離れしていて、一事が万事、ホンキになれない。もっと言えば、いつも遠くを見ているような高橋一生の二枚目演技にも食傷。
-
映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
想いびとの命の恩人である謎の未来人をシラノと名指すのは、“シラノ・ド・ベルジュラック”か。なるほど高橋一生のけなげさ、自分はその人物ではないと言う愛想づかしの場面などは非常にロマンチック。常に寝癖のアタマ、おたく的な早口&挙動不審、でありながら高橋一生以外の何者でもないあたりがファンに喜ばれそう。「一週間フレンズ。」と同様また川口春奈が受動的なヒロインをやってるという既視感も。タイムSF恋愛ものつながりで「君と100回目の恋」と二本立て希望。
-
映画評論家
松崎健夫
噴水に落ちたボールを拾う川口春奈。その刹那、彼女の背後で水が噴出するショットは、映画の中の或る登場人物は勿論、観客も彼女に魅了されなければならない。それは、高橋一生演じる平野が“シラノ”となり、観客からも「彼女を見守らねば」という感情を引き出すためである。ボールを持つ手に注視すると、長い指で?むフォルムの美しさが強調されていることも窺える。また人生を前に進めるため、殻を破ることを卵に暗喩させるなど、劇中に様々なメタファーをちりばめた筆致も一興。
1 -
3件表示/全3件