ヴィクトリア女王 最期の秘密の映画専門家レビュー一覧
ヴィクトリア女王 最期の秘密
ヴィクトリア女王と英領インドの青年の知られざる実話を映画化。女王の即位50周年記念式典で記念金貨を献上するため英国にやってきたインドの若者アブドゥル。最愛の夫と従僕を亡くし塞いでいた女王は、王室のしきたりにとらわれないアブドゥルに心を開く。出演は、「クイーン・ヴィクトリア 至上の恋」のジュディ・デンチ、「きっと、うまくいく」のアリ・ファザル。監督は、「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」のスティーヴン・フリアーズ。脚本は、「リトル・ダンサー」のリー・ホール。第90回アカデミー賞衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞ノミネート、第75回ゴールデン・グローブ賞主演女優賞ノミネート。
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批評家、映像作家
金子遊
天皇明仁の生前退位の報道を見ると、皇族や王族に生まれなくて本当にラッキーだったと思う。本作で描かれるヴィクトリア女王もそうだが、特別な階級に生まれても職務に縛られて不自由ばかり。おまけに、政治家や王室職員による権力ゲームにも巻きこまれる。英国ヴィクトリア女王と、19世紀末は植民地だったインドの若者の友情が、階級と文化的なギャップを超えて描かれる。喜劇だが、彼を「心の師」のようにして慕う女王の、人の上に立つ者としての孤独と悲壮感も伝わってくる。
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映画評論家
きさらぎ尚
「Queen Victoria 至上の恋」のその後の、晩年の女王を描いたこの映画、ジュディ・デンチが継続して女王を演じたことを含め、しつらえが手堅い。俗な言い方をすれば、前作で従僕との間に相互に流れた情愛は、今作では優しくされることが嬉しい老女王に。夫君に続いて従僕に先立たれた寂しさに加齢もあっただろうが、そこに見事に取り入った、ハンサムなインド人の従僕の描き方も面白い。二人に振り回される英王室といった図式だが、監督S・フリアーズの通俗の混ぜ込み方がうまい。
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映画系文筆業
奈々村久生
かつての欧州貴族にとって愛人やソウルメイト的な親友を作ることは一つの文化的風習であったと聞く。本作で描かれている女王とインド人青年との関係も、それに属するものとしてとらえることもできそうだが、ジュディ・デンチ演じる女王がほとんどキャラクター化しているのと、相手の青年がターバン姿でこれまたキャラクター的ないでたちなので、恋愛なのか友情なのか利害なのか、そのどれもである関係ゆえの喜劇と悲劇が、ひどく滑稽に見える。そしてそれは実際そういうものなのだろう。
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