ウルフなシッシーの映画専門家レビュー一覧

ウルフなシッシー

第18回TAMA NEW WAVEでグランプリ・ベスト女優賞・ベスト男優賞を受賞したコメディ。売れない舞台女優・アヤコが親友・ミキと飲んでいると、アヤコの破局寸前の彼氏・辰夫がやってくる。泥酔したアヤコと辰夫は、互いの不満を吐き出していく。監督・脚本・主演は、「さいなら、BAD SAMURAI」の大野大輔。出演は、「少女邂逅」の根矢涼香。
  • 評論家

    上野昻志

    タイトルが何を指すのか、よくわからないが、大野大輔監督、主演ぶりも堂に入っている。対する根矢涼香の、相手を睨み付けるような眼差しも、コワくて良い。ベッド一つで一杯のワンルームで延々と繰り返される言葉のバトルも、こういうカップルならいかにもありそうな物言いでリアル。時々、挟まれる二人が出会った頃の様子が、ドツボに填まったような現在を浮き彫りにして効果的。ラストの、自販機が並ぶ道に出てきた根矢の動きを引きの画で捉えたショットにニヤリとしてしまった。

  • 映画評論家

    上島春彦

    十分に楽しめたものの、痴話喧嘩で長尺は無理。男女のなれそめとか、回想を入れて飽きさせない工夫は評価できる。そこでの過去の女は結構かわいいのだが、現在の彼女が今一つ。というか冷静に考えると悪いのは女の方ではないか。パチンコに依存している以上に男に依存しているのである。一方、男はあんな最悪のAV現場でも投げずに成立させようとして立派な人だ。結局一晩しゃべり続けるというコンセプトはいいのだが、細部が弱い。部屋の狭さをもっと活かしてほしかったところ。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    映像的な魅力は薄いものの室内に着席して会話が始まると、途端に輝き始める。倦怠期カップルの会話の攻防が実に魅力的で、インディース映画にありがちな歯の浮くような台詞や、男根主義が透けて見えることも無い。映画・演劇周辺に居る者にとっては抱腹絶倒かつ洒落にならない生々しさを持つ押し問答が躍動する。生活感や経済観念を具体的に描くことで奥行きが広がり、双方の内面を覗かせるあたりも抜かりない。諦念を持ちつつそれでも生きていかねばならない疲弊感が響いてくる。

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