嘘はフィクサーのはじまりの映画専門家レビュー一覧

嘘はフィクサーのはじまり

リチャード・ギアが次々と厄介事に巻き込まれるフィクサーを演じたブラックコメディ。自称フィクサーのノーマンは、出世を目論み、イスラエルの政治家エシェルに接近。やがてエシェルが大統領に就任すると、ノーマンも超大物たちの間で暗躍を始めるが……。共演は「運命は踊る」のリオル・アシュケナージ、「スターリンの葬送狂騒曲」のスティーヴ・ブシェミ、「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」のシャルロット・ゲンズブール。監督は「ボーフォート -レバノンからの撤退-」でベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)、「フットノート」でカンヌ国際映画祭脚本賞をそれぞれ受賞したヨセフ・シダー。
  • 批評家、映像作家

    金子遊

    R・ギアがイスラエルの副大臣に靴を買っただけで親友になれることが解せないし、首相と仲良くなって急にフィクサーになる件もリアリティがない。脚本段階で人物の掘り下げとプロットの詰めが甘かったのかと疑ったが、佐藤唯行教授の解説によれば、NYとイスラエルを結ぶユダヤ人の同族ネットワークでは、共通の知人さえ捏造できれば著名人にも手が届くし、イスラエルへの貢献度で在米ユダヤ人社会での地位も決まるとのことで、これはこれでリアルな物語らしい。少し賢くなれた。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    フィクサーと聞けば、政界や財界を裏側で牛耳る黒幕をイメージするが、画面に登場したギアを見た瞬間、あれれ? くたびれたキャメル色のコートにカバンを斜めがけにして、小股でひょこひょこ歩きをする姿はさえないオヤジではないか!? だがこれはユダヤ社会の人脈意識に、嘘を積み重ね、投資家の食事会からつまみ出され、相手に胡散臭さを見抜かれてもめげない彼の、格好悪さを絡めたコメディ。主題よりも、むしろ話のポイントになる人物に配役された達者な俳優たちが見もの。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    リチャード・ギアの演じる詐欺師まがいのフィクサーがいい。こういうキャラクターはたいてい口八丁手八丁で世渡り上手なのだけど、彼は決して器用なタイプではなく、見ていて危なっかしいのだが、そんな人間がわざわざそういうやり方で何がしかの人物になろうとしていること、またその目的や理由にこれといった必然性が見られないところに、得体の知れない業の深さとやるせなさを感じる。コメディに寄り過ぎず一生懸命なのにどこか空虚さを漂わせているのがギアの真骨頂。

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