僕はイエス様が嫌いの映画専門家レビュー一覧

僕はイエス様が嫌い

第66回サンセバスチャン国際映画祭で最優秀新人監督賞を受賞した奥山大史監督による長編デビュー作。祖母と暮らすため、東京から雪深い地方のミッション系小学校に転校してきた少年ユラ。日々の礼拝に戸惑う彼の前に、他人には見えない小さなイエス様が現れる。少年ユラを本作が映画初主演となる佐藤結良が演じるほか、お笑いコンビ『チャド・マレーン』のチャド・マレーン、「スクール・オブ・ナーシング」の佐伯日菜子が出演。
  • 評論家

    上野昻志

    雪深い山村のミッション系の学校に転校して、決まった時間に礼拝する少年の戸惑いから始まるこの映画。何よりも、教室の外の無人の廊下を縦構図で撮ったショット。また、礼拝堂に上がっていく渡り廊下を雪に埋もれた校庭の側から撮ったショット。そして、雪中での二人のサッカーをロングから捉えたショットなど、画面の一つ一つが鮮明に眼を捉える。小さなイエスが何故現れるのかわからない。しかもイエスは何もしない。親友をも助けない。だから、彼は弔辞を読んだときイエスを潰すのだ。

  • 映画評論家

    上島春彦

    ショッキングな題名だが見て嫌な気がしない。声高なメッセージを前面に出さないからだ。むしろ少年はこれをきっかけに信仰に目覚めるのかもしれないし。神様は「いないと思えばいない」のだ、という仏教徒の祖母の含蓄ある言葉の意味に、少年はこの映画の後で立ち返るわけだな。画面には現れないが、死んだ友へのお祈りを拒否した笹川君の真意とか、献花の件で妙に手回しの良い担任の先生とか、気がかりな細部(もとより答えはない)が数多く見応えあり。ラストの俯瞰も効いている。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    塩田明彦+園子温的な小学生と宗教の映画だろうと想像していると、どんどん逸脱する。荘重さが欲しいと思う場面は軽く処理され、対立が起こると思うと、軽くいなされてしまう。神様の描写も軽すぎると観ている間は思うが、神仏習合の国の子どもが想像するイエス様はこんな感じだろう。大人が都合よく子どもを動かすのではなく、子どもの目線に寄り添ったからこそこうなったと思えば、納得できなくもない。背伸びせずにこれまでの来し方を集約させた監督の次こそが始まりとなる。

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