ダンスウィズミー(2019)の映画専門家レビュー一覧

ダンスウィズミー(2019)

常にオリジナル脚本にこだわる矢口史靖監督によるミュージカルコメディー。一流企業で働く鈴木静香はある日、催眠術をかけられ、音楽を聞くと所構わず踊り出してしまう体になってしまう。仕事もお金も失った彼女は、催眠術師を探すため日本中を駆け巡るが……。出演は「いぬやしき」の三吉彩花、お笑いタレントのやしろ優、シンガーソングライターのchay、「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」の三浦貴大、「50回目のファーストキス」のムロツヨシ、「ゴジラ」シリーズの宝田明。
  • 映画評論家

    川口敦子

    ウェルメイドな聖林映画の娯楽を要とする心を受け継ぐインディ出身監督矢口、その失われたジャンル/ミュージカルへの冒険は、踊り出したら止まれないヒロインの「赤い靴」、「雨に唄えば」のソファー背倒し等々、さりげなく古典をふまえつつ暴走ヒロインのロードムーヴィーへ、要は自分の世界への引き込みもしらりと断行し、ともかく愉しませる。「舞妓はレディ」に続き今回は“ミュージカルの素人”ヘプバーンの「パリの恋人」での活かし方を睨むような桝井Pの挑戦としても興味深い。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    さすが矢口史靖。当意即妙のアイデアがつるべ打ちのシナリオはすこぶる快調、シチュエーションや人物のカリカチュアも絶妙なラインで、終始飽きさせない。なにより主演の三吉彩花の魅力が十二分に引き出され、彼女の表情や動きを眺めているだけでも楽しめる。肝心のミュージカルシーンは、観ているこちらが思わず一緒に踊り出したくなるような高揚感には欠けるが、呆気にとられる周囲をよそに強制的に踊らされるという設定ゆえ、おそらくある程度は意図されたものなのだろう。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    ミュージカルでの歌と踊りの不自然さを催眠術でそうなることにしたら、という発想。音楽場面への入り方のシャープさ、全体の音響構成の滑らかさ、もっと欲しいし、ときに相当泥くさくもなるが、もうこの種のミュージカルはそうであるしかないのかもしれない。直線的ながら弾力あるヒロイン三吉彩花を支えるように、癖ある出演者たちがそれぞれに奮闘。矢口監督らしい手作り的仕掛けが最後には功を奏した。何を応援する方向の楽しさにするのか。ゴールへの道のりを踏みちがえていない。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事