ごっこの映画専門家レビュー一覧

ごっこ

早世の鬼才・小路啓之による伝説的漫画を原作に、「ユリゴコロ」の熊澤尚人監督、お笑いタレントの千原ジュニア主演で映画化。大阪の寂れた帽子店で仲睦まじく暮らす城宮と5歳になるヨヨ子。だが実はこの二人、他人に知られてはいけない秘密を抱えた親子だった。共演は「羊の木」の優香、「もんちゃん」の平尾菜々花、「スキャナー 記憶のカケラをよむ男」のちすん、「暗黒女子」の清水富美加、「ライアの祈り」の秋野太作、「新宿スワンII」の中野英雄、「孤狼の血」の石橋蓮司。脚本は熊澤尚人と「凶悪」の高橋泉。撮影を「帝一の國」「ユリゴコロ」の今村圭佑、音楽を「八日目の蝉」「孤狼の血」の安川午朗が務める。
  • 評論家

    上野昻志

    とにかく、千原ジュニアが素晴らしい。それにヨヨ子に扮した平尾菜々花! 相手を見つめるときの彼女の目ヂカラもそうだが、子ども同士で遊んでいるときは、いとも無邪気な表情をみせる、その振幅に感心する。さらに、ぶっきらぼうな物言いの裏に愛を感じさせる婦人警官の優香。話としては、引きこもりに児童虐待に年金不正取得と、いかにも現代らしい問題が詰め込まれているのだが、それらを説明的にではなく、ジュニアと菜々花の血の繋がらぬ親子の結びつきの背後に抑えた演出がよい。

  • 映画評論家

    上島春彦

    良い話が嫌な話に変わり、また良い話に戻る。基幹は、誘拐犯と少女のつかの間の楽園暮らし。面白いのだがどう考えても設定に辻つまの合わない感じがあり、星を減らした。要するに「少女が実の親から虐待されている」と主人公が考える根拠のことだが、詳しくは書けない。各自ちゃんと見て考えてね。もう一人の少女がすうっと闇の中から現れるあたりの演出が凄いのだが。物語が終局、さっと十数年飛ぶ感じもいい。黙秘を続ける主人公に、成長した少女が会いに行く場面に涙があふれた。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    長らくオクラになっていたのが不当に思えるのは、映画俳優として正当に評価されているとは言い難い千原の魅力が映し出されているからだ。同じ疑似家族映画でも年金不正受給描写も含めて他人の子どもを連れ去って育てることに真摯に向き合っている点で「万引き家族」より良い。現代版『じゃりン子チエ』的な前半は、もっとハチャメチャでいいし、後半の展開は重いというよりも、設定が先立って描写として消化しきれているとは言い難く、映画の方向性を迷わせた感があるのが惜しい。

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