デイアンドナイト(2019)の映画専門家レビュー一覧

デイアンドナイト(2019)

俳優・山田孝之が初の全面プロデュースを手掛けたドラマ。父の自殺をきっかけに故郷に帰ってきた明石。父の遺した負債のため金策に走っていると、児童養護施設のオーナー・北村が手を差し伸べる。施設で働き始めた明石は、北村のもう一つの顔を知ってしまう。主演・企画・原案は、「栞」の阿部進之介。他に出演は、「きらきら眼鏡」の安藤政信、「3月のライオン」シリーズの清原果耶。監督は、「オー!ファーザー」の藤井道人。2019年1月19日より秋田先行公開。
  • 映画評論家

    北川れい子

    聞けば脚本が完成するまでに4年ほどかかったそうだが、結果として「万引き家族」の二番煎じに近い、“窃盗家族”になっている。いや、たとえ「万引き家族」が先行しなかったとしても、設定や背景、人物にムリヤリ感があり、ストーリーにおけるその方便が観ているこちらにストンと落ちてこない。家族のため、弱者のためなら犯罪も、というのだが、社会の不条理や不公正さを俎上に乗せるのなら、頭ごなしではなくもっと足元から描くべきだ。ガランとした田舎町が舞台なのも実感を欠く。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    流麗な映像と陰鬱な出来事、泥臭く愚直な世界認識の主人公たち。一貫してそういう映画をつくっている監督藤井道人をひそかに応援しているが、本作、これはいったんじゃないか。昨年の話題作のひとつ「空飛ぶタイヤ」と同様の自動車の欠陥告発、リコール隠し、大企業対町の小さな会社(ほとんど個人)というネタがあるが、本作のほうの弱者が犯罪で抗しようとすることのヒリヒリ感と毒と狂気、“蟷螂の斧”感は苦い。敗残に甘えるのでなくそれは観客に渡される。広く観られてほしい。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    人間の二面性ともいえる善と悪の境界性が曖昧であることを、復讐の是非を問うことによって描いた本作は、あえて明確な答えを提示しない。ここで描かれているのは、醜聞に対する好奇の視線や血縁に依らない家族関係のあり方、あるいは格差社会の現実や現行法の限界など多岐にわたる。さらには、印象的に登場する風力発電の巨大な風車がエネルギー問題をも感じさせ、風車の回転の有無は物語とも同期させている。そして企画の背景は、役者にとって望ましい企画が少ない現状をも物語る。

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