永遠の門 ゴッホの見た未来の映画専門家レビュー一覧

永遠の門 ゴッホの見た未来

ウィレム・デフォーが孤高の画家ゴッホを演じ第75回ヴェネチア国際映画祭男優賞を受賞した伝記ドラマ。幼い頃から精神に病を抱え周囲と人間関係を築けず常に孤独の中にあったゴッホ。誰にも理解されずとも筆を握り続けた彼が人生を通じ見つめたものとは……。「潜水服は蝶の夢を見る」で第60回カンヌ国際映画祭監督賞、第65回ゴールデングローブ賞監督賞を受賞したほか、新表現主義の画家としても著名なジュリアン・シュナーベル監督が、ポスト印象派を代表するフィンセント・ファン・ゴッホの強烈な人生を描く。ウィレム・デフォーは本作により第91回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。
  • アメリカ文学者、映画評論

    畑中佳樹

    音楽が素晴らしい! と耳を切り落とした画家、ゴッホについての映画に向かってあえて口走ってみる。正確にいえば、ピアノの音楽、いきなりの無音、自然音、仏語英語の語り、人物の顔、動き、カンヴァスに線を描く音、光、カメラの揺れ、そういったもの全てがどうブレンドされ、モンタージュされるか、という意味での官能の音楽に酔いしれた。人はこういうスタイルを詩的というのか、錯乱しているというのか、私は単に映画の原点といいたい。時々目をつむれるくらい気持ち良い。

  • ライター

    石村加奈

    60代のウィレム・デフォーが30代のゴッホをのびやかに、みずみずしく、表現する。時折スプリット・ディオプターを使用した、ブノワ・ドゥロームのカメラが、ゴッホの視点となって、ゴッホが見つめる世界の美しさや広さ、希望や絶望を生々しく提示する。これはゴッホという画家を通して、ジュリアン・シュナーベル監督の芸術論を描いた映画なのだろう。「残された者?」のマッツ・ミケルセン扮する聖職者とゴッホの対話が印象的だ。ゴッホ自殺説を覆した、本作の見事な予兆となる。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    ステディカムが当たり前の今時にしては珍しいほぼ全篇ブレた手持ちカメラでゴッホの見ている日常=「世界」が描かれていくのだが、それは誰もが知る名画が誕生するのを目撃しているような生々しさがあり、絵の存在以上の価値まで目の当たりにさせられる。見た目が自画像のゴッホそのままという、キリストに続き“死後有名になった人物”を演じたデフォー。ゴッホが生涯悩まされた幻覚を映像で見せず、彼の憑依した様な人物造形と描かれた作品だけで表現されているのが凄まじい。

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