長いお別れの映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
冒頭の、遊園地のメリーゴーラウンドの前に傘を持って現れたときの、山??努の顔にドキッとさせられたが、それは、認知症がかなり進んだ段階でのことだとあとでわかる。この辺の病気の進行具合を時間軸で切っているのだが、山??努が、それを肉体的な表現として見せたのはさすがだ。そんな彼に対して、常に変わらぬのが松原智恵子演じる妻、男との関係で変わるのが蒼井優扮する次女と、孫との関係も含め、印象的な場面はあるのだが、時間を明示する以外のやり方はなかったのか、とも思う。
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映画評論家
上島春彦
試写の前日偶然、前頭側頭型認知症という言葉をETVで聞いていたので理解もスムーズにいった。このタイプの認知症はボケない。頭は別な回路でクリアになる。だから障害はコミュニケーションの阻害に現れる。思えばこの映画の登場人物は皆、頭は良いのだがそっち方面に問題あり。長い年月で各自そこを解決していくという手順が楽しい。要するにお父さん山??努は導きの天使みたいなものだ。お母さん松原智恵子の好演も特筆すべき。ずっと下を向いたままで怒る、という場面に爆笑した。
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映画評論家
吉田伊知郎
山??努と蒼井優が互角に演技をぶつけ合う姿を観られたので満足だが、良くも悪くも松竹映画か山田組かと思う瞬間もしばしば。若者の側から観た老いや死なので、老人側の視点に立つと違和感を持つのも当然か。竹内がアメリカ暮らしに慣れないといっても、どうかと思うほどぎこちない暮らしをしていたり、妻の松原はもうちょっと注意深く山??を見ておけよと思えるあたりや、メリーゴーラウンドでの見知らぬ幼女の扱いなど、見せ場のための作為性に引っかかるのは監督の前作と同じ。
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