サッドヒルを掘り返せの映画専門家レビュー一覧

サッドヒルを掘り返せ

およそ49年もの間、人知れず眠り続けていた「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」のロケ地サッドヒルを復元しようとする有志たちを追ったドキュメンタリー。スタッフやキャストによる撮影当時のエピソードを交え、奇跡的ともいえる一大プロジェクトの顛末に迫る。監督は、本作が初長編作品となるスペイン出身のギレルモ・デ・オリベイラ。出演は「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」の音楽を担当したエンニオ・モリコーネ、主人公ジョーを演じたクリント・イーストウッド、編集を務めたエウヘニオ・アラビソ、映画歴史家のクリストファー・フレイリング、映画監督のアレックス・デ・ラ・イグレシア、ジョー・ダンテ、ヘヴィメタルバンド『メタリカ』のジェイムズ・ヘットフィールド、「サンゲリア」などのキャメラマン、セルジオ・サルヴァティ。第30回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門にて上映。
  • ライター

    石村加奈

    「続・夕陽のガンマン」(66)の伝説のシーンが撮影されたサッドヒル墓地が50年の時を超えて、映画ファンの手で掘り返されるというビッグ・プロジェクトの全貌に迫った本作。世界中からスペインの荒野に集まったファンと、彼らにビデオ・メッセージで、率直に感謝を伝えるエンニオ・モリコーネやクリント・イーストウッド、世界的ファン代表として『メタリカ』のジェイムズ・ヘットフィールドらの心の交流に、映画ひいては芸術の素晴らしさを感じて、観ているだけで胸が熱くなる。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    浦崎浩實氏のキネ旬連載『映画人、逝く』をまとめた美しい2巻の書『歿』を持ち出すまでもなく、墓参りは映画史にとってきわめて神経過敏な領域である。S・レオーネ監督「続・夕陽のガンマン」(66)ラストの有名な墓場の決闘が撮られたスペイン中部の渓谷をファンが再発見し、墓参りし、聖地として整備する。しかし当時のスペインはファシスト独裁。政権にとって兵士の有効活用が急務だったからこそ、壮観なロケが実現した。この皮肉へのより徹底的な追究こそ肝要ではなかったか。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    「続・夕陽のガンマン」の熱烈ファンが集結して、クライマックスに登場の巨大な墓場を復元する。いやもうマニアがハマると何をしでかすか分からないと、こちらはアキレつつ感嘆! 作品自体はちとファンクラブの会に乱入した異端者の居心地の悪さが。けれど、当時のスタッフやエキストラが語る撮影現場のエピソードはやっぱり面白い。モリコーネとかイーストウッドの証言も貴重。特に橋爆破の話は抱腹。個人的にはあの映画にさほど思い入れがないが、愛好家には感激の一作だろうなあ。

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