フロントランナーの映画専門家レビュー一覧

フロントランナー

1988年に起きた政治スキャンダルを基に「マイレージ、マイライフ」のジェイソン・ライトマン監督が、ヒュー・ジャックマン主演で映画化。アメリカ大統領選挙で当選確実とされていたゲイリー・ハート。だが、たったひとつの報道が彼を失脚へと追い込んでゆく。共演は「トレイン・ミッション」のヴェラ・ファーミガ、「セッション」のJ.K.シモンズ、「人生は小説よりも奇なり」のアルフレッド・モリーナ。原作は、マット・バイ著『All the Truth is Out』。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    ハンサムで聡明で論理的なゲイリー・ハートの魅力と欠点(それもまた魅力だが)をヒュー・ジャックマンがきっちり体現。でもこの映画は彼の物語というよりは、彼を中心とした群像劇。お仕事ドラマとして観るのも可能。ハートの活躍の裏で女たちが踏みつけにされていたことを示唆しているのがイマっぽい。スクープをものにしたマイアミ・ヘラルドの政治記者の複雑な表情も、ポスト紙の若い黒人記者が抱える行き場のない思いも心に残る。ピアノをフィーチャーした音楽もなかなかいい。

  • 映画監督

    内藤誠

    ヒュー・ジャックマンの演技からゲイリー・ハートがアメリカを良くすることに熱意を燃やす政治家であることは伝わってくる。だが、現代のわれわれからすると、とるに足りないと思える女性関係の質問について、彼がなぜ、もっと丁寧に答えてやらないのかと、いらいらする。政策とは別問題だと、上から目線で応じないのだ。一方、いまでは珍しくもないマスコミがどっと押し掛ける事態にはそれなりに慌てる。ライトマン監督はそんな時代の移り変わりをクールな演出で見せてくれた。

  • ライター

    平田裕介

    公人として優秀ならば、私人としてのスキャンダルは許されるのか?政治家に対する過剰報道は、公人の適正ジャッジとして機能するのか?ゲイリー・ハートの失墜劇を息詰まるタッチで描きつつ、そのあたりもしっかりと考えさせるのはさすがジェイソン・ライトマンといったところ。彼と長く組んでいるE・スティーバーグによる撮影も素晴らしく、弁解しようがない醜聞を捉えた写真を携えた記者の来訪を機に、ゲイリーがすべての終わりを悟るまでを追いかけた終盤の長回しはお見事。

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