さらば愛しきアウトローの映画専門家レビュー一覧
さらば愛しきアウトロー
名優ロバート・レッドフォードが、実在した伝説の銀行強盗を演じる俳優引退作。80年代アメリカ。紳士的な犯行スタイルで強盗と脱獄を繰り返したフォレスト・タッカー。ジョン・ハント刑事が彼を追うなか、フォレストは仲間と共に金塊を狙った大仕事を計画する。共演は「歌え!ロレッタ 愛のために」のシシー・スペイセク、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のケイシー・アフレック、「リーサル・ウェポン」シリーズのダニー・グローヴァー、「Dr.パルナサスの鏡」のトム・ウェイツ。監督は「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」のデヴィッド・ロウリー。
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翻訳家
篠儀直子
冒頭から全ショット、あまりにも〈映画〉すぎて震える。レッドフォードと、TV画面のなかのC・アフレックの目が合う(!)瞬間、感激のあまり動揺する。過去を語る部分が見たこともないよどみなさで現在のなかに取りこまれ、パンニングと反復が心地よく、跳躍を交えた素晴らしい編集のリズムに、ダニエル・ハートの音楽が完璧にシンクロする。「セインツ」で一躍脚光を浴びて以来、傑作しか発表していないD・ロウリーだが、これはもはや偉業の域。この先どこまで行ってくれるのか!
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映画監督
内藤誠
人を絶対に傷つけないという実在した銀行強盗の晩年をロバート・レッドフォードが俳優の引退作品として、しわの多くなった顔の、紳士然とした風貌で淡々と演じる。「明日に向って撃て!」の昔日を思い出して感無量。共演のケイシー・アフレックやシシー・スペイセクも渋い。ハリウッド大作なら、派手な脱獄の場面やカーアクションもできたはずなのに、サンダンス映画祭で育てたデイヴィッド・ロウリー監督による、自主映画タッチの作品で静かに引退とは。感情移入して、星を加点。
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ライター
平田裕介
その状況も物語も違うが、銀行での幕開けは「ホット・ロック」、刑務所内での姿は「ブルレイカー」といった具合に“俺(私)にとってのレッドフォード映画”を彷彿させる場面がアチコチに。狙っているかどうかはともかく、それだけ我々のなかにレッドフォード御大が染み込んでいるのは確か。小悪党のようでなんだか大物という否応なく支持してしまう主人公の造形を筆頭に、大スターであった御大自らが製作も務めているだけにその輝度が一瞬でも下がらない作りになっているのもお見事。
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