芳華 Youthの映画専門家レビュー一覧
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ライター
石村加奈
ヒロインのシャオピンを演じた、ミャオ・ミャオは「初恋のきた道」(99)のチャン・ツーイーを彷彿とさせる可憐さだ。貧乏な出自も非常識も彼女のせいではないが、一旦異端とみなされた彼女は集団生活でいじめられる。逃げ場のない彼女は、涙が枯れた後の呆然とした顔で、我慢するしかない。切ない。一度だけ、積年の恋情を抑えきれなかった不器用さから、模範兵を返上して流浪の運命を辿るリウ・フォンの、死にきれず、戦地で苦悩する横顔の陰影。若者の邪気のない顔に胸を打たれる。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
文化大革命で揺れた中国70年代が、このような流麗たる筆致によって大河ドラマと化す時代が到来しようとは。80年代に第五世代が台頭して以降、私たち外国の観客が中国映画に見てきたのは、文革で弾圧された知識層の被害実態をめぐる苦渋の描写だった。ところが本作の懐古主義は、すでに堂々たる普遍性をまとっている。アジア・フィルム・アワード作品賞という栄冠を手にしたこのスペクタクル性は、現代中国映画の変容を高らかに宣言した。その是非を問うのはこれからだろう。
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脚本家
北里宇一郎
一様に笑顔を浮かべた中国舞踊団は不気味だ。でもその一人一人に、個性があり葛藤もあってというこの映画に魅せられて。文革の終焉から中越戦争を経て経済社会へと至る約20年間を生きた若者たち。その群像から浮かびあがったのは、体制からはみ出た二人の男女だった。そこに中国政治への批判を潜ませる。理想的優等生だった男が、どんどん堕ちてゆく。その皮肉。そんな男に秘かな恋情を抱いて、修羅場を生き抜いた女。彼らが遂に再会の幕切れに眼が潤んで。流れるような映画絵巻!
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