王様になれの映画専門家レビュー一覧

王様になれ

ロックバンドthe pillowsの結成30周年記念プロジェクト『Thank you, my highlight』の一環として制作された青春ドラマ。カメラマン志望の祐介を主人公に、厳しい現実や想いを寄せる女性とのすれ違いなど、彼らがこれまで音楽で描いてきた世界観が展開される。主演は「新聞記者」の岡山天音。原案・音楽をthe pillowsのボーカル・山中さわおが担当、監督・脚本は、俳優・演出家として活躍するオクイシュージ。
  • 映画評論家

    川口敦子

    バンド結成30周年の記念映画、それもドキュメンタリーや実話ベースの物語ではなく、オリジナルの青春映画――というセールス・ポイントを除外しても何者かになろうとあがく青年の腐臭すれすれの上昇志向のしぶとさは“いまさら感”を徐々に蹴散らし、奇妙な捨て難さに手をかけていく。そのじわじわとした磁力のようなもの。それは背景をとばして人の顔に肉薄する撮影福本淳+照明市川徳充の力に因るところ大だろう。あるいはそれなしではうんざりだけが降り積もった!?

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    型通りの葛藤、型通りの挫折、型通りの恋愛劇……驚くほど陳腐なストーリーと人物造形のうえに、過度なモノローグはじめ延々と説明的な演出がつづく。the pillowsの歌が好きな人なら、合間に挟まれるコンサート場面や音楽場面で持ち直すのだろうが、そうでない評者のような観客にはひたすら退屈。ファン映画であるとしても、もう少し趣向を凝らしたフックがなければ、あまたある青春映画のなかに埋もれてしまうだけだろう。主演の岡山天音の嫌味のない朴訥さがせめてもの救いか。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    カメラマン志望の、ラーメン屋で働く青年。人との関係のなかで助けられ成長していくが、演じる岡山天音が弱い心をいい感じで出していて、身につまされた。ラーメンの葱をまちがえて入れたあとの対応の拙さからの流れなどだが、そこに登場もした原案者山中さわおとオクイ監督の、たぶん人生経験に培われたものが味になっている。写真の出てくる作品にふさわしく、撮影もていねいだ。ただ、せっかくの音楽を活かしきっていなくて、時折まじめさに沈み込む調子になるのが惜しい。

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