ワイルドツアーの映画専門家レビュー一覧

ワイルドツアー

「きみの鳥はうたえる」の三宅唱が、山口情報芸術センター主催の映画制作プロジェクト“YCAM Film Factory”で手掛けた作品。ワークショップの進行役を務める大学1年生の中園うめは、中学3年生のタケやシュンと共に、森を探索することに。出演者には、ほぼ演技経験のない10代の中高生たちを起用している。
  • 評論家

    上野昻志

    まず、山口県山口市で、YCAMが実際に行っている、採取した植物のDNAを解析し、植物図鑑を作るワークショップがあり、それに参加した中学生たちの行動を描いていくというのがベースだから、ごく淡々と展開するのは当然といえよう。唯一のドラマは、中学生の男の子が、二人同時に、年上の女性を好きになるというところで、それぞれの拙い告白に、いかにも、この年頃の男の子という感じが出ていた。そこでの演出を、それと感じさせない点が監督の技量だろうが、それ以上の起伏はない。

  • 映画評論家

    上島春彦

    様々な映像スタイル、というか正確には素材を記録する媒体、が混ぜこぜになる面白さ、またフィクションとドキュメンタリーの境界が曖昧になることの知的興奮は、見れば普通に分かる。一方、解説を読むとさらに面白さが増す感じもある。作品の成立事情や周辺情報、それに舞台となる施設の性質が鍵だから。だが、それって映画としてどうなんだろう。広報活動の一環に過ぎないような。一番面白いのは、ラスト・クレジットでキャストの名前と採集植物の名前がごっちゃに出てくるところかも。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    演技経験は違えども、「きみの鳥はうたえる」の3人組と同じく、ここでも少年少女の3人組が際立って魅力を放つ。そこに施された演出も撮影形式も異なるはずだが、同じように濃密な空間が生まれている。一時逗留者となった監督が描く山口は山あり沼ありの冒険活劇の舞台となり、ポストモダンなYCAMの建物を起点にDNA採集を行ったりと、SF映画を観ているかのようだ。虚構を作り上げて演技経験のない若者たちが演じるリアルは、職業俳優の演じるリアルを心地よく挑発する。

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