COLD WAR(コールドウォー) あの歌、2つの心の映画専門家レビュー一覧
COLD WAR(コールドウォー) あの歌、2つの心
第71回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞、第91回アカデミー賞で監督賞、撮影賞、外国語映画賞にノミネートされたラブストーリー。冷戦に揺れるポーランドで出会った男女が別れと再会を繰り返しながらも、互いへの燃え上がる想いだけは貫こうとする15年を綴る。監督は「イーダ」のパヴェウ・パヴリコフスキ。出演は「夜明けの祈り」のヨアンナ・クーリグ、『ポコット 動物たちの復讐』のトマシュ・コット、「イーダ」のアガタ・クレシャ、「杉原千畝 スギハラチウネ」のボリス・シィツ、「バルバラ セーヌの黒いバラ」のジャンヌ・バリバール、「おとなの恋の測り方」のセドリック・カーン。
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ライター
石村加奈
年上のピアニストとの恋に落ちるズーラが魅力的だ。自分の未熟さを知っている、聡明なヒロインである。時代や環境が変わっても、二人の恋の炎は決して消えることがなく、ゆえに切ない。監督が三番目の登場人物と語る音楽も素晴らしい。民族音楽からジャズへとアレンジを変えて、劇中で繰り返し歌い継がれる『心』はもちろん、エンドロールで流れる『ゴルトベルク変奏曲』も、耳をすませて聴いてほしい。教会の丸窓に切り取られた空から、荒れ地へと転調するカメラワークもドラマチック。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
第二次大戦終戦から戦後混乱期にかけての男女のクッツイタリ離レタリは、まるで吉田喜重「秋津温泉」東欧版のごとし。共産化したポーランドからパリに亡命した男が芸能界で俗物化する展開も「秋津温泉」に似るが、吉田が東京シーンをあえて精彩を欠く描写としたのに対し、今作は硬めに引き締まったモノクロームが効いて、ヌーヴェルヴァーグ胎動期のパリを生々しく起き上がらせる。単にメロドラマ的情熱に終始せず、流転の副産物をも見据えようとする透徹ぶりに舌を巻いた。
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脚本家。51年生まれ
北里宇一郎
題名がずばり“冷戦”。ポーランドの「灰とダイヤモンド」「夜行列車」のあの頃を思い出し、スタンダード白黒の画面が懐かしさに拍車をかける。ソ連体制下の国から亡命した男と留まった女のすれ違い恋愛劇。2つの心はどちらにいても安逸を得ない。そのひりひりを、もうもう貴方しかいないところまで追い詰めていくこの脚本。切ない。だけどその切実さがワイダ、カワレロウィッチまで迫ってこないところに、時代の隔たりを感じて。この監督、少しスタイリッシュに過ぎるのではないか。
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