ゴールデン・リバーの映画専門家レビュー一覧
-
翻訳家
篠儀直子
西部劇なのにガンアクションを、というよりもアクション自体を撮ることをすべて回避している不思議な映画で、描かれるのは、つかの間の桃源郷を折り返し点として、追跡し、追跡される者たちの魂の軌跡。彼らの桃源郷は、暴力的な父権を(および、もしかしたら女たちをも)排除したところにある。ジョン・C・ライリー好演。近年の西部劇映画には珍しい豊かな色彩で描かれる西部の生活と自然(ただしロケ地はヨーロッパ)が目に楽しく、デスプラの個性的なスコアが抜群にかっこいい。
-
映画監督
内藤誠
フランスのジャック・オーディアールが監督する新しい趣向の西部劇。遠くで拳銃の火花が散る冒頭の場面からスタイリッシュで、次々に予期せぬ事件があり、サスペンスもある。ジョン・C・ライリーとホアキン・フェニックスの殺し屋兄弟がオレゴン一帯を取り仕切る提督に頼まれて、リズ・アーメッドを殺す旅に出る物語だが、せりふも文学的で、随所に笑わせるところもある。アーメッドは黄金を見分ける発明をした化学者でジェイク・ギレンホールがからみ、意外な展開を描く映像が秀逸だ。
-
ライター
平田裕介
殺し屋兄弟と化学式を握る者たちの追いつ追われつが展開するのかと思いきや、西部開拓時代が舞台のスローライフ称賛ドラマともいうべき意外にもノンビリした物語で、二組を描く配分もなんだかチグハグ。銃撃戦もあることにはあるがまったくもって派手ではない。それでも引き込まれるのは良い役者が揃い、各々がそれなりに魅せてくれるから。「ガルヴェストン」もそうだったが、フランス人監督がアメリカンな作品を撮ることで生じる良い意味での“ズレ”みたいなものは堪能できた。
1 -
3件表示/全3件