ロケットマンの映画専門家レビュー一覧
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非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト
ヴィヴィアン佐藤
「ボヘミアン・ラプソディ」の撮影最後の数週間を引継いだデクスター・フレッチャー監督作品。薬物依存更正施設の車座での告白シーンが物語に通底されていて、文字通りステージ衣裳を脱ぎ捨てて身も心も裸に近づいていく。存命中の本人による製作総指揮という珍しい作品で、本人が自身の半生の語り直す。人生において理解できないこと、納得しがたいことを映画に投影することでの自己治癒効果。劇中の告白と実際の映画製作という二重の語り直しの入れ子構造であるところが興味深い。
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フリーライター
藤木TDC
昭和世代にとりエルトンのミュージカルの代名詞だったケン・ラッセル「トミー」に本作は重なる。少年期の虐待トラウマ、夢の実現と神への接近、母との関係、主人公が成功し舞台仕掛けが派手になるほど気持ちが暗鬱になるもどかしさ。娯楽性で「トミー」ほど突き抜けてないのは製作に関わったエルトン自身が被害意識を主張しすぎなんじゃ? 楽しいことも随分あったろうに。俳優のイマイチなボーカルを除けば悪くない演出、序盤の軽快ムードで最後まで押しきってほしかった。
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映画評論家
真魚八重子
キッチュな衣裳と『黄昏のレンガ路』という、象徴的なファーストシーンに鮮烈な印象を受けたが、その喜悦を超えるカットが続かない。ストーリーがエルトン・ジョンによる自己憐憫と他責的な訴えに覆われて、暗くよどんでしまっている。ミュージカルとしての楽しさ、奇抜さを丹念に演出しつつも、エルトンの孤独に苦しむ描写に空気が引きずられすぎているようだ。成長期、麻薬中毒期に偏って、絶頂期が薄い比重も満足感が足りない。T・エガートンは肉感的でなりきりぶりも奮闘。
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