ヒキタさん! ご懐妊ですよの映画専門家レビュー一覧

ヒキタさん! ご懐妊ですよ

自身の体験を基にしたヒキタクニオによる同名エッセイを原作に、日本を代表する名バイプレーヤー・松重豊主演で映画化。一回り以上年が離れた妻サチと暮らす49歳のヒキタ。ある日、妻の一言をきっかけに妊活を始めるが、実は彼の精子は老化現象を起こしていた。共演は「スマホを落としただけなのに」の北川景子、「あの日のオルガン」の山中崇、「本能寺ホテル」の濱田岳。監督・脚本は「オケ老人!」の細川徹。
  • ライター

    須永貴子

    妊活という極めてデリケートな題材を、夫婦がタッグを組んで頑張るスポ根的な切り口で描いたことで、間口の広い作品に仕上がった。生殖能力に難ありと診察された夫が奮起し、トンデモ妊活法にすら縋り、アスリートのように努力を重ねる姿は中年のヒーローだ。観客は泥臭く奮闘する彼を応援し、医師の言葉に一喜一憂する。監督の持ち味であるヌケ感のあるコメディセンスもプラスに作用。やたら耳障りのいい、FM系英語曲のBGMにより、監督の色が悪い意味で漂白されてしまった。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    実話はなんと言っても強い。“これ、本当だよ”と言われて見ているから、邪念も入らない。作家というとだいたい太宰のような“無頼”な男を出してくるが、ヒキタさんは良識のある誠実な男だし、妻はそれに見合うように健気で可愛い。とても好感が持てるのだ。だが、今や妊活は巷に情報があふれていて、中でなされる妊活の試みはおなじみなものばかり。十年前にこれが出てきたら、驚きを持って迎えられたであろうに……。好感以上のものがほしかったとも思った。

  • 映画評論家

    吉田広明

    こちらは生命の誕生の方の映画。男性の不妊治療の話だが、不妊治療の実際の解説も交えつつ、周囲の無理解や、幾多の失敗を越えて目的達成にたどり着いた過程をユーモアと共に描いた、一組の夫婦の努力の物語。原作者は革ジャン、スキンヘッドの強面の人というが、松重豊の善人イメージのおかげで、大学教授たる妻の父が彼を嫌うのがただの意地悪、不妊治療を恥ずかしいことと断じるのも頑迷固陋にしか見えなくなり、映画的にも浅くなってしまった気がする。

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