トールキン 旅のはじまりの映画専門家レビュー一覧

トールキン 旅のはじまり

「ロード・オブ・ザ・リング」の原作者J・R・R・トールキンの前半生を映画化。幼くして両親を亡くしたトールキンは、奨学金でキング・エドワード校に通う。そこで3人のかけがえのない友人と出会い、下宿先でも3歳年上の女性エディスと絆を深めるが……。出演は、「女王陛下のお気に入り」のニコラス・ホルト、「あと1センチの恋」のリリー・コリンズ、「オリエント急行殺人事件」のデレク・ジャコビ、「ダンケルク」のトム・グリン=カーニー。監督は、「トム・オブ・フィンランド」のドメ・カルコスキ。
  • アメリカ文学者、映画評論

    畑中佳樹

    偉大な創造をなしとげた人間の実人生はえてして平凡で地味なものだが、このトールキンの若き日を描いた伝記映画は、そこで妙な無理をせず、平凡に見えるものの中に非凡な細部を見つけていくような語り口で全体を描き切った。そんな中で一つの重し、というか目玉となるのが第一次大戦の塹壕戦の体験で、戦場の凄惨な光景とトールキンの創造した神話世界とが、同じ力で拮抗しつつ一つに重なり合う。充実した映画の時間が流れるが、いまいち「読破感」のようなものに欠ける。

  • ライター

    石村加奈

    「トム・オブ・フィンランド」で、伝説のアーティストの漂泊感をふしぎな味わいで表現したドメ・カルコスキ監督の腕が冴えわたる。第一次世界大戦下、親友を探して彷徨う主人公トールキンの姿から始まる物語は、おのずと「指輪物語」を想起させる。「ホビット」族とおなじ、未熟な人間として、青年時代のトールキンの素顔に光をあてた構成にも、奥行きがある。バロウ書店をはじめ、舞台美術も重厚だ。リリー・コリンズが魅力的なだけに、エディスとの関係にもう少し光を注いでほしかった。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    多くのファンタジー好きと同様、私も少年時代に数年かけて『指輪物語』を読破した(その難解な文章を読み進める過程はまさに「冒険」だった)。本作はトールキンが第一次大戦時の戦場で親友を探す旅、そして彼の幼少時代からその戦場に赴くまでの回想を同時進行で描いているのだが、どちらにも後に執筆する「物語」を構築する要素、その誕生の瞬間がちりばめられている。そこに「友情」や「恋愛」を盛り込むのでややダイジェストな憾もあったが、ファンとしては楽しめた。

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