さよなら、退屈なレオニーの映画専門家レビュー一覧

さよなら、退屈なレオニー

トロント国際映画祭最優秀カナダ長編映画賞受賞の青春ドラマ。ケベックの海辺の街で暮らす17歳の少女レオニーは、高校卒業を1ヶ月後に控えながらどこかイライラとした毎日を送っていた。そんなある日、街のダイナーでミュージシャンのスティーヴと出会う。監督は、カナダの新鋭セバスチャン・ピロット。出演は、本作で2018年東京国際映画祭ジェムストーン賞を受賞したカレル・トレンブレイ。劇場公開に先駆け、第31回東京国際映画祭ユース部門にて上映(映画祭題「蛍はいなくなった」)。
  • ライター

    石村加奈

    ふわふわの長い髪を風になびかせながら、しかめっ面で街を歩くレオニー。ファッションを含め、観ているだけで幸福を感じさせるパーフェクトなヒロインだ。退屈な場面から抜け出す、少女のささやかな抵抗や、蛍のモチーフなどきれいに整えられた物語で唯一違和感を残すのは、レオニーが惹かれるスティーヴの存在。しかし葬儀から帰宅後のレオニーとの一連の描写(亡母の愛犬との小ネタも秀逸)を観ていたら泣いた。彼は論ずることのできない幸福、あるいは愛を象徴していたのかもしれぬ。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    不機嫌な女子高生である主人公はこの映画の中で二度消え去る。一度目は母と継父との気の進まない会食から。二度目は大事な止まり木から。ピロット監督は「これは青春映画ではない」と明言する。「今日のケベックのポートレイトを撮ったのだ」と。そしてそのポートレイトにはすでに「消失」が織り込まれている。私はいつでも消えられる。私を連れ去るバスはきょうも私の前で停車してくれた。取り巻くすべてが耐えがたい。だからいつも消失態勢の再点検をしておきたいの、と。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    最近の日本の青春映画は大人が出てこない。けど、あちらのヤツはどんな大人を登場させるかが決め手で。理想と思う父親、嫌悪する継父。彼らとは全く違う男と出会って、少女は家族ではない他者の存在を知っていく。世間と歩調が合わず、淡々と我が道を行く男。この二人の、恋とか性とか超越した関係が良くて。スネたり怒ったりツッパったりの彼女の感情の動き。その繊細な描写が、井手俊郎脚本の少女映画を思わせ、「ゴーストワールド」の影を匂わせる。主演女優がちと美人すぎる気が。

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