イエスタデイ(2019)の映画専門家レビュー一覧
イエスタデイ(2019)
ダニー・ボイルが、リチャード・カーティスの脚本を映画化したユニークな音楽ドラマ。無名のシンガーソングライター、ジャックはある日、交通事故に遭遇。昏睡状態から目を覚ますとそこは、自分以外誰一人としてザ・ビートルズを知らない世界になっていた。出演はテレビ作品を中心に活躍するヒメーシュ・パテル、「シンデレラ」のリリー・ジェームズ。
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非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト
ヴィヴィアン佐藤
世界中の12秒間の停電により、ビートルズが存在しない世界に迷い込んでしまったジャック。この世とは別の宇宙が多数存在しており、そこにもうひとりの自分がいるというマルチバース的宇宙論。「いまや一曲を16人が制作する」という台詞と、ビートルズという集団の創作をひとりでこなしている振舞いは一見対極に映る。しかしそれは同義だ。創作物を集団知によって認識できたものだけが「結果」となるから。そしてビートルズを再聴することで、我々の集団的感覚が炙り出された。
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フリーライター
藤木TDC
近年ヤキが回ったダニー・ボイルだが本作もくだらない。劇中に描かれる最悪の「マーケティング会議」で決まったような売れ筋要素をつないだだけの企画。主人公の視界と性欲がすべてを支配する恋愛系アニメみたいなペラい世界観と機知も驚きもない安直な結末。サウンドの作り込み抜きで曲が大ヒットするのもリスペクトになってない。そもそも基本設定がどこかで見たアイデアってこと自体が批評の刃として作品の内側に向かう。その皮肉がヘソ曲がりには愉快……なのが二重に皮肉。
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映画評論家
真魚八重子
タイムスリップもの等にありがちなアイデアだが、絞りを徹底したのは効果的。ただストーリーは脚本家R・カーティスによる青春恋愛劇で軽く、一夜で世界が一変しようと、長きにわたりすれ違う男女の物語であろうと、深刻である必要はないと割り切っているようだ。オリジナリティを巡る苦悩も描かれつつ、その芸術性を取り扱う着地点が最良であるのかは疑問で、全体にズシッとこないライトさ。ビートルズの汎用性の高さへの再認識や、楽曲を新たなアレンジで聞く楽しさはある。
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