アートのお値段の映画専門家レビュー一覧

アートのお値段

「マイ・アーキテクト ルイス・カーンを探して」でアカデミー賞にノミネートされたナサニエル・カーン監督が、アート市場の真実に迫ったドキュメンタリー。サザビーズ秋季オークションが迫る中、美術界の有力者にカメラを向け、アートとお金の関係を探る。2018年に彫刻作品『ラビット』が存命するアーティストのオークション過去最高額となる約100億円(9110万ドル)で売却されたジェフ・クーンズら美術家や、オークショナー、ギャラリスト、評論家、コレクターらにカメラを向ける。
  • ライター

    石村加奈

    ステファン・エドリスにとってのマウリツィオ・カテランの「彼」の付加価値は、たしかに美術館ではつけられないだろう。コレクターの愉悦に納得。しかしアーティストの芸術的価値とは、100億円で落札されたジェフ・クーンズのステンレス製ウサギの彫刻と、野ウサギと暮らすアトリエで、抽象画を描き続けるラリー・プーンズ、どちらのウサギがお好み? というレベルから発展せず、経済的価値との関係性は判然としない。オークショニアやギャラリストの存在価値も、やや物足りず。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    右欄「カーライル」と同じ構造の映画だと言える。貧者のための覗き窓として、映画が機能し始めたのだ。時にそれはセレブ御用達ホテルとなり、時に現代アートの売買市場となる。時には銀座の一流寿司屋にも。F・ワイズマンが開いた限定空間への覗き窓は、仏頂面のワイズマンに任せておけない野心家たちによって多様なバリエーションが展開されつつある。バブルの軽薄さを呪うことは誰でもできるが、その仮想の間口の広さこそが本作の真の主題であることを作者は熟知しているのだ。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    山中貞雄の無声映画の傑作が見つかった。オーディションにかけられる。超高値で落札。以降、そのコレクターの眼にしかふれられないとしたら。ここで取り上げられているのは美術品だけど、映画に替えて想像したらゾッとする。格差社会の上流の人たち、それに群がるアート・ビジネスの連中。今や芸術は私有財産か投資の対象。悪びれもせず自説を語る彼らの顔を、作り手は淡々と記録する。こんな状況に苦笑し、ため息をつきつつ作品に向かい続ける画家たち。そこにひと筋の光を当てて。

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