パリの恋人たちの映画専門家レビュー一覧

パリの恋人たち

「グッバイ・ゴダール!」のルイ・ガレルが監督・主演を務めたラブストーリー。アベルは同棲中のマリアンヌから友人ポールの子を妊娠したと明かされ、別れを告げられる。数年後、ポールの告別式で彼女と再会すると同時に、ポールの妹イヴからも告白され……。出演は、「キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け」のレティシア・カスタ、「プラネタリウム」のリリー=ローズ・デップ。第31回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映作品。第66回サンセバスチャン国際映画祭脚本賞受賞。
  • 映画評論家

    小野寺系

    ヌーヴェルヴァーグからの連続性を保つ、ごきげんなほどクラシカルな筆致で、恋愛模様や感情の揺れる機微を、あえて小さなスケールにとどまって描くスタイルには共感するし、そこに様々な可能性を感じるのは確かだ。しかし、いま社会から切り離されたように見える抽象的な人間描写で恋の駆け引きを表現することにどれだけの意義があったのかには疑問。ケーキの上にのった生クリームだけをすくいとってなめたような味がする。とはいえ、これが好きな観客もいるだろう。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    美男美女を揃えた配役に興味をそそられて見たのだが、かすかにヌーヴェルヴァーグの雰囲気が漂い、得した気分に。マリアンヌとエヴの二人の女性に映るアベルのキャラの違いが面白い。彼が主体性に欠ける男として、特にエヴに振り回されるのは、原題にあるように、根が誠実だからか。いずれにせよ、そのいささか物足りない性格が、いまどきの恋愛模様を反映しているかに思える。腹八分目のたとえのとおり、そこそこ感が心地よい。邦題は、内容が伝わるように、一考の余地あり、かも。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    父ちゃんの映画「救いの接吻」で三輪車をこぐ姿が可愛かったルイ坊やがこんなに大きくなって監督・主演でこんなにもステキな映画を撮ったことにまず感動したし、各々の心情をモノローグで語らせる、下手すれば興ざめ甚だしい手法をも洒脱に使いこなし、現実と寓話のバランスも見事に、この物語を75分の短尺で語り切ってしまうセンスの良さには舌を巻くばかりで、なにより父フィリップ・ガレルの「お話があんまり面白くない」という弱点から逃れ、しっかり面白いのが素晴らしい。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事