高津川の映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
日本遺産の石見神楽、日本の一級河川で唯一ダムのない高津川、そこで捕れた鮎など、地域の名産や名物を詰め込み、無理筋ではないシナリオにきれいにまとめあげたお国自慢映画。清流や雲海をフィルムで撮影した映像は、「行ってみたいな」と思わせる美しさ。だが、エンターテインメントとしては、ストーリーやメッセージ、劇伴など、すべてがあまりにも既視感があり優等生的。石見神楽にまつわるシーンだけで、芸術(娯楽)としての純度が高いため、それ以外のすべてが蛇足に見える。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
ダムがない日本一の清流と言われる高津川。その流域に暮らす人たちの様々な人間模様。そう聞けば、およそどんな映画なのか想像がつき、想像通りに話が進む。悪くはない。親切な道案内を得ているようなものだ。それで心に染みるんなら文句はないが、染みることはなかった。小学校の閉校、リゾート開発、認知症など様々な問題を抱えながら、住民は誠実に生きていく。が、テーマがとっ散らかっていて、人物を深く掘り下げているようにも見えない。もっといい映画になった筈なのに……。
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映画評論家
吉田広明
田舎礼賛映画。東京の大学にやった息子が、このすばらしい田舎を捨てるなんて何を学んだのか、とか、全部機械化で職人の腕が消えてしまっていいのか、とか、長回しで良い場面ぶる上に、問題意識が古くさくて繰り言にしか聞こえない。なぜこうなるのかという構造的問題まで目が届いていないから、ではどうすればという展開もない。故郷を捨てた個人が悪いということになり、一人の改心でハッピーエンドという安易さ。発想も演出も凡庸。フィルム撮りなのに発色がおかしいのも問題。
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