ケアニン こころに咲く花の映画専門家レビュー一覧
ケアニン こころに咲く花
介護をテーマにした人間ドラマ「ケアニン あなたでよかった」と同じスタッフとメインキャストによる続編。大型の特別養護老人ホームに転職した介護福祉士の圭は、認知症の美重子の担当になる。しかし美重子の夫・達郎は施設を信用せず、圭にも厳しく当たる。出演は、「“隠れビッチ”やってました。」の戸塚純貴、「ゆずりは」の島かおり、「一粒の麦 荻野吟子の生涯」の綿引勝彦。監督は、「コスメティックウォーズ」の鈴木浩介。
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映画評論家
川口敦子
これは映画として面白いとかなってないとか評することとは別の所で成立している映画ではないだろうか。教育啓蒙映画といったらいいのだろうか。要は“ケアニン”なる存在を広く知らしめることをまずめざした一作なのだと思う。である以上、説明的な筋の運びや演技に目くじら立てるのもお門違いというものだろう。で、この際、この場を借りてケアニンの皆さまへのお願いをひとつ、「○○さーん、■■ですよ~」と、老人の尊厳を無視するような語調、ぜひ再考してみていただきたい。
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編集者、ライター
佐野亨
悪しき効率性を批判する映画が効率性にはまり込み、ことばでなく細かな所作から感情を読み取るべしと教える映画がことばに頼りきっている矛盾。「認知症の母親はなにもわからない」と訴える女性に主人公は毅然と反論、実際彼の行為はことごとく承認され感謝されるが、容易く承認も感謝もされず、それでも「なにもわからない」ことと向き合わねばならない点にこそ認知症介護のむつかしさがあるのでは? 「愛情は消えない」という美辞で糊塗されているものは小さくないと感じる。
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詩人、映画監督
福間健二
施設に親を入れたことに複雑な思いがあるし、自分は入りたくない。私はそうだが、当然、この「不信」を打ち破ってくれる施設があってほしいし、それを応援する声も聞きたい。その期待は半ば充たされたと言おう。作品の芯は、島かおり演じる認知症の女性への対応と、その夫、娘、孫の気持ちの動き方に。そして、主人公と同僚たちの関係の好転まで、全体が「理想を言うのはいいが現実を考えろ」のもっともらしさを揺さぶる構成だ。残念なのは、音楽の使い方と島以外の演者の魅力不足。
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