リンドグレーンの映画専門家レビュー一覧

リンドグレーン

『長くつ下のピッピ』などスウェーデンを代表する児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの若き日々を取り上げた伝記ドラマ。奔放なアストリッドは保守的な田舎のしきたりなどに息苦しさを覚えるように。やがて地方新聞社で働き始め、才能を開花させる。監督は、長編デビュー作「EN SOAP」(原題)で第56回ベルリン国際映画祭審査員グランプリ・銀熊賞に輝いたペアニレ・フィシャー・クリステンセン。「ペレ」「愛の風景」のビレ・アウグスト監督の娘でNetflixドラマ『ザ・レイン』などに出演するアルバ・アウグストが、アストリッドを演じる。
  • 映画評論家

    小野寺系

    偉大な児童文学作家の、人生の辛い箇所をピックアップしていて、当初は「なぜその部分を…?」と思ったが、2回鑑賞して、描かれたいくつかの現実的なエピソードのなかに、彼女の創作の核となるものがしっかりと描かれていることに気づく。スウェーデンの田舎を舞台にしながら、大自然を叙情的に映し出すだけの演出はなく、無駄なカットの少ないストイックなつくりも好感が持てる。余談だが、ほぼ同時代に生まれた金子みすゞの生涯を思うと、日本の閉鎖性はより深刻だ。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    アストリッド・リンドグレーンが娘として、女性として、母としてと、立場を変えていく様を仕掛けも特殊効果もなく綴っていて清々しい。離婚係争中の男性との恋、出産、働くシングルマザーの苦悩。波乱の日々を生きる彼女の感情を北欧の風景と絡め映し出す演出の巧みさ、併せてアストリッド役を演じるアルバ・アウグストの心情表現のうまさも出色。作家以前のことは知らなかったが、人を愛しき傷つき、息子に愛情を注ぎながら世界的な児童文学作家になっていった原点が見える誠実な作品。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    作家リンドグレーンの生涯を描いた映画だとばかり思って観たのだが、さにあらず彼女が少女から母親になるまでの短い期間に焦点を絞っているがゆえ、伝記モノ特有の展開のせわしなさとは無縁に、一人の女性の成長をつぶさに見つめた普遍的な物語になっており、伝記映画というより女性映画といった方がしっくりくる作り。端正な画作りに時折雑味を混ぜ込んだ演出は、優しく、時に激しく、不安定な彼女の心情をスクリーンに焼き付けているし、なによりアルバ・アウグストが素晴らしい。

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