シャドウプレイ 完全版の映画専門家レビュー一覧

シャドウプレイ 完全版

中国で実際に起きた汚職事件を巡る騒乱を基に「ブラインド・マッサージ」のロウ・イエ監督が撮り上げたサスペンス。市当局の再開発事業責任者の謎の死を追う刑事ヤンは、何者かの謀略でスキャンダルに巻き込まれる。ヤンは香港に逃れ、ある女と恋に落ちるが……。出演は「モンスター・ハント」のジン・ボーラン、「SHOCK WAVEショック ウェイブ 爆弾処理班」のソン・ジア 、「長江 愛の詩(うた)」のチン・ハオ。第20回(2019年)東京フィルメックス特別招待作品(オープニング作品)。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    高層ビルの隙間に取り残されたドヤ街みたいな場所から話は始まる。乱闘、叫び声、押し寄せる人の群れ。夜になってもその暴動は収まらない。ドキュメンタリータッチの荒々しい映像は、本当にそこに暴動が起こっているかのようだ。薄暗い部屋、若い刑事と人妻の濃厚な絡み合い。ふたりの息遣いがエロい。旦那のDVも凄まじい。タバコの火を押し付けたりとか、痛々しくて見ていられない。描写がとにかく冴えわたっていて、迫力がある。最初から最後までワクワクしっぱなしだ。

  • 文筆家/俳優

    睡蓮みどり

    映画祭で以前見たときも心惹かれたが、改めて良作である。「完全版」という形で公開できたことがまずは嬉しい。怪しげな三角関係から始まる愛憎サスペンスはどこに行くのか。今はもう取り壊されてないであろう「村」の暴動からはじまり、駆け抜けるように時代を生きる男女。「物語」に綺麗に集約してしまえないほどの情報量と熱量が画面から押し寄せる。アクションシーンも多く、まさに一緒に駆けていくかのような体感をこの映画はもたらす。とても無傷ではいさせてくれない。

  • 映画批評家、都立大助教

    須藤健太郎

    経済発展の矛盾を体現する?村の景観に着想を得たとはいえ、監督がこの土地から立ち上げるのは痴情のもつれに収斂する陳腐な通俗劇でしかない。ジャンプカットの多用に加え、異なる時制を小刻みに入れ替えながら進むモザイク的なナラティヴはそうした通俗性に与えられた意匠だろう。トラックの荷台をガラス張りにして、走るショールームと化した車。本作の山場は、ヤンとジャンの対決によって、この虚飾と展示の象徴が破壊されるくだりに設定されている。衒いのなさこそ娯楽の条件。

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